カスハラを考える 第一弾 - 経営視点で考える1人の問題客と999人の良好な顧客関係

カスタマーハラスメント(カスハラ)大木ブログ講師ブログ

シリーズ「カスハラを考える」

カスハラを考える 第二弾 - 経営に影響を与えるカスハラ問題

この記事の結論

カスハラ対策は、単なる従業員保護策ではありません。2023年11月の厚労省による企業義務化を契機に、お客様との新しい関係性を構築するチャンスとして捉えるべきです。特に重要なのは、「お客様は神様ではない」という認識のもと、1000人に1人の問題客のために999人の良好な顧客関係を損なわないというバランスの取れたアプローチです。

この記事からわかる事

  1. カスハラ対策は「お互いさま」の関係構築が鍵
  2. 従業員の給与は顧客からの直接的な支払いではなく、サービスの対価
  3. 999人の良好な顧客関係を維持しながら、問題行動への対応を行う重要性

大木 ヒロシ(おおき ひろし)

タブロイド紙記者としてのジャーナリスト経験を経て実業界に転身。複数の企業体とフランチャイズチェーン本部を立ち上げた経営実務経験を持つ。その豊富な経験を活かし、ジャイロ総合コンサルティング株式会社を設立。現在は、ハラスメント防止研修を中心に、コンプライアンス、事業承継など幅広い分野でのコンサルティングと講演活動を展開。大手企業から中小企業・商店まで多くの成功事例を持ち、年間200回を超える講演をこなす超人気講師。感動と共鳴を生む独自の講演スタイルには定評があり、ハラスメント防止に関する実践的かつ効果的なアプローチで、多くの企業や組織の職場環境改善に貢献している。

『お客とお店のためのシン・カスハラ対策~カスハラ対策で伸びる店・カスハラで潰れる店』(セルバ出版)著作

カスハラ対策の新しいアプローチ

11月26日、「厚生労働省 カスハラ対策 を企業に義務付け」が発表された。

方針案として、「3つの要素のいずれも満たすもの」として、以下が示された。

  • 顧客、取引先、施設利用者、その他の利害関係者が行う
  • 社会通念上、相当な範囲を超える言動
  • 労働者の就業が害される

 そして、「企業が講じるべき措置」として

  • 会社の方針を明確化して周知・啓発
  • 労働者からの相談に応じて適切に対応するための体制整備等が上げられた。

 カスハラ対策は全ての企業が対象となるが、55.8%の企業が取りくみ対応していないというのが現状である。一方で大手小売りや外食各社が来店客による店員等への理不尽な要求「カスハラ(カスタマーハラスメント)」関する対応指針を相次いで公表し社員を守る姿勢を明確にしており、人手不足の中でカスハラ被害による離職が深刻な原因となっているためだとしており、企業規模を問わずカスハラ対策は大きな懸案事項となっている。

 しかし、その一方で人口減少が続くなかで深刻な顧客減少化が浮き彫りになっている。例えば、コンビニの店舗数の飽和が云われ、コンビニの月別店舗数は前年同月比でマイナスの状況が二年以上も続いているという現状がある。

 カスハラ対策を経営視点で考えたとき、「人手不足と顧客(買い手)不足という、相反する条件のなか」

でどう考えるかが重要なポイントになると思われる。

 そうした観点からみて。カスタマーハラスメント(カスハラ)対策を考える前に考えてもらいたいことがある。それは、お客様は「神様ではない。あなたと同じ人である」ということである。人としての在りようの基本は「社会的」に生きる、すなわち互いの了見を互いに良いようにすり合わせるということが必要なのではあるまいか。

 お客様(消費者)にとって、店(企業)を通じて需要(消費)を満たすことは重要な生活条件である。その、一方で店(企業)にとっては、お客様(消費者)の存在なしに経営は成り立たないことは自明の理である。こう考えると、店とお客様は「お互いさま」としか例えようがない間柄なのだ。だから、カスハラはしてもいけないものだし、されてもいけないものだと考えて欲しい。

 ここで、カスタマー(お客様)対応をせざるを得ないあなたに質問がある。貴方の給料は誰がくれるのか? 答えはカスタマーサービスの教科書にもよく載っているとおり、お客様である。お客様が商品やサービスを購入し、そこから原価を差し引いて残った利益から貴方の給料が支払われる。会社の利益の約60%は人件費となるといわれている。つまり、貴方の給料はお客様が支払ってくれているということになる。

 しかし、私はその考え方は大きな間違いであると考えている。お客様の立場で考えてみると、従業員である貴方の給料を支払うために商品やサービスを購入しているわけではない。お客様はあくまで商品やサービスの対価として支払いをしているだけである。結果として、そのことが貴方の給料に結びつくためには、貴方自身の対応如何であると伝えたい。貴方が考え方を変え、やり方を変え、工夫をした結果、お客様に喜んでもらう。貴方の対応への対価が給与という形になっているだけに過ぎない。貴方自身の問題であり、お客様から単に給与をもらっているのではない。逆に言えば、お客様が悪いと突きつければ、給料が入ってこないということになるかも知れない。

 企業はカスハラ対策を真剣に取り組むことによって、さらに顧客開拓を拡大し、永続的に繁栄していく礎を築いていかなければならないと考えている。怖いことは、カスハラ対策を進めることで従業員が皆、お客様を敵として捉えてしまうことである。そうなると本来の企業活動は終焉を迎える。先にも述べたように、企業はお客様の存在なしでは存続することはできない。自給自足の活動をしていない限り、お客様がいるからこそ企業活動を継続することができるのだと考えたい。

 最近のカスハラに関する報道や対策マニュアルを見るにつけ、どうもお客様を「敵」のように見ているのではないかと思うケースが増えた。お客様は本来は味方であるはずなのに、「敵」としてみなし始めているように感じている。確かに敵になるようなお客様は存在するだろう。しかし、その割合を冷静に考えてもらいたい。カスハラのような異常な行動をとるお客様は1000人のうち1人いるかいないかであろう。お客様を敵視するカスハラ対策を進めていくと、1000人のうち1人のために残りの999人を犠牲にすることになるのではないか。1人の異常者のために999人に嫌な思いをさせる経営を良しとするのか。良好な関係を築いているお客様の気持ちを損ねるものであるとしたら、その対策は大きな間違いではないかと思う。

カスハラ対策を講じる前に、先ず冷静に経営視点からそのことを考えてほしいと思う。

シリーズ「カスハラを考える」

カスハラを考える 第二弾 - 経営に影響を与えるカスハラ問題

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近年、カスタマーハラスメント(カスハラ)は深刻な社会問題として注目を集めています。しかし、従来の対立的な対応では、企業と顧客の関係性を損なうだけでなく、結果として事業機会の損失にもつながりかねません。近年のカスハラ問題に対し本書は、ジャイロ総合コンサルティングが長年多くの企業・団体での研修/コンサルタントを通じて培ってきた知見をもとに、カスタマーハラスメントの考え方ならびに対処方法について、「対立から共創へ」という今までにない新しい切り口でアプローチを試みたものであります。

書籍「シン・カスハラ対策」特別無料セミナー

本書籍の出版を記念し、著者自らが語る特別無料セミナーを開催します。カスハラ問題を単なる接客トラブルとしてではなく、より広い社会問題として捉え、経営者から現場スタッフまで幅広い方々に新たな気づきをもたらす内容となっています。

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