販売促進の基本「視点を変える」

セミナー講師陣の売上UPノウハウ集

販売促進とは情報発信である。では、情報発信の中身とは何か。それは、顧客にとって有用な情報のことである。自分の商品や会社の強みや特徴はもちろん、顧客目線で有用性があるかどうかがポイントになる。時には、商品や自社そのものの弱みも「有用な情報」となり得る。顧客が求めている「情報」に焦点を合わすことが前提だ。

だとすれば、情報発信することができる、あるいはすべきネタは無数にある。その無数にあるネタの中から、どれを選び出して集中的に発信するのかを検討することも重要である。通常、チラシや広告などでアピールするコピーや内容と言うのは、これらのネタの中から選び出したものを採用することがほとんどである。ネタと言うのは、顧客に伝えたいメッセージそのものである。ならば、経営資源が限られているということも踏まえて考えれば、自社が持つネタの中から何をアピールするのかを決めるということは極めて重要な意味を持つ。

自社の特徴を洗い出す

自社の特徴を洗い出せば、ネタは見えてくる。多くの場合、自社の強みがネタとなる。強みの考え方については、販売促進の出発点(1)「あなたの会社の強みは何ですか?」で紹介した通りである。
強みと弱みを特徴として考え、そしてその両面から本質的な「強み」を考えるということがポイントになる。この場合、何かを基準(対象)としなければ特徴を挙げることはできないが、そこでの基準は競合他社である。だからこそ、競合他社のことをしっかりと把握しておくと言うのが重要であった。

視点を変える

一方、競合他社・競争業者と言うのは思いのほか難しい概念である。なぜならば、あなたのライバルは、あなたの想像を超えたところに存在している可能性が高いからだ。それを明確にするためには、「買い手の視点」であなたの会社や商品をもう一度しっかりと分析することが必要になる。
具体例を考えてみよう。例えば、あなたがハンバーガー屋を経営していたとする。ここで、販売促進を行うために自店の特徴を洗い出すという作業を行った。比較の基準、すなわち比較対象は、近所に3つ存在するハンバーガー店である。
「接客が良い」「他店より安い」「他店よりボリュームが多い」・・・といろいろと特徴が出てきた。そして、あなたは最も訴求したいメッセージを「ボリューム」に決めた。そして、「当店のハンバーガーは他店に比べ圧倒的なボリュームがあります」という販売促進を行っていく。この考え方は間違ってはいない。しかし、買い手の立場に立ったメッセージであるのかと言うことを、競合他社・競争業者という視点で検討する余地がある。

買い手の視点

結論的には、競争業者とは、同業他社だけとは限らない。簡単に言えば、ハンバーガーを食べる人は、どのハンバーガー店に行こうか考えている人だけではない。
例えば、小腹が空いた時のことを考えてみよう。多くの場合、ハンバーガーか、ピザか、駅の蕎麦か、クレープのどれにしようか考える人が多いはずだ。つまり、ハンバーガーを食べると決めて「ハンバーガー屋」を探す人よりも、小腹を満たすために「どのファーストフードにしようか」迷っている人の方が多い可能性が高い。
であれば、ハンバーガー屋の主人としては、競争業者は近隣のハンバーガー屋ではなく、隣の蕎麦屋やクレープ屋や、軽トラの焼き芋屋になるかも知れない。必ずしも同業他社が競争業者とは限らない。この場合の競争業者は、近隣のファーストフード店全般になる。この場合、ハンバーガーと言う商品に着目するよりも、周りのファーストフードと比較して出てきた特徴をメッセージに込めた方が良いだろう。例えば、「すぐに食べられ、低カロリー」とかである。あるいは、休憩がてら小腹を満たすという人が多いのであれば、「1階30席、2階50席喫煙可能」という空間的な魅力を打ち出すことも可能だ。
自分のお店に来る顧客は、何と比べているのか、これを明確にすることが重要なのである。ハンバーガー屋のライバル店は、ハンバーガー屋ではない可能性が高い。そう言った視点で、競争業者を考えることは非常に重要である。

代替品の存在

今までは競争業者と言えば、同業他社と言うのが当たり前だった。しかし、現在のように、商品やサービスの高付加価値が進んでくると、必ずしも自分と全く同じ業種・業態でビジネスを行っている者が競争業者とは限らない。
クリーニング店であれば、他のクリーニング店と比較をして自店の特徴をアピールする。しかし、現在の「洗濯機・乾燥機」は家庭用でも格段の進化を遂げ、今まではクリーニング店に出さざるを得なかった物まで家庭で綺麗に、そして簡単に洗うことができる。だとすれば、クリーニング店にとって「洗濯機・乾燥機」は自店が提供するサービスと同等の価値を提供する代替品である。
とすれば、「買い手」の心理からして、いくつかあるクリーニング店と比較をしているのではなく、クリーニング店と洗濯機を比較している可能性がある。この場合、クリーニング店が顧客に訴求するポイントは、他店との違いではない。むしろ、洗濯機に比べて、いかに自店(クリーニング店に出すこと)の方が有用性があるのかを訴求しなければ、買い手の心理に沿った情報発信とは言えないのだ。

自社が提供する価値

このような視点で考える場合、着目すべきは2つある。まずは、「買い手の気持ちに立つ」ということである。買う人の立場になって、自社が扱う商品やサービスを、何と比較するのか、もう一度真剣に考えてみる。
新築住宅を行っている会社であれば、買い手の心理として何と比較するだろうか?それを、自分の視点、すなわち売り手の視点ではなく、買い手の視点で考えるのである。
そうすれば「リフォーム」という発想が出てくるはずだ。であれば、同業他社の新築住宅と比べてどこが違うのか、と言うことも重要だが、リフォームと比べた新築のメリットもメッセージとしては重要であるということだ。これが、買い手の気持ちに立つということである。もちろん、地域によってはマンションが比較対象になる場合もある。この場合は、マンションと新築住宅の比較を訴求しなければならない。
もう一つは、自社の提供している「価値」に着目する方法。あなたの製品やサービスが提供している「価値」とは何か。一般的に、買い手は単に商品やサービスを購入しているのではない。それらを購入することによって得られるであろう、価値を購入している。
あなたが提供している価値は何か。先のハンバーガー店であれば、ハンバーガーに加えて、ゆったりとくつろぎたいという空間にまで価値を見出していたとする。そうすれば、「空間」に価値を見出す買い手に対して、「座席多数」や「喫煙ルームあり」と言う特徴は大きなメッセージになる。
クリーニング店が提供する価値が、「手間を掛けない」ことや「大きい洗濯物も可能」ということであれば、そこをメッセージにすれば代替品たる洗濯機に勝機を見出すことができる。

比較対象を工夫する

競争業者を、単なる同業他社ではなく、買い手の視点に立った「比較対象」で捉えることは優位性を発揮する。
「当店は他店と比べボリュームのあるハンバーガーです」というメッセージは、確かにボリュームを求めるターゲットにはマッチしているかも知れない。しかし、敢えて同業他社と比較することで、同業他社の店舗(イメージ)を想起させてしまう可能性もある。
新築住宅であったら、それらの差別化された事実を確かめるために、他の住宅店にも問い合わせをするかも知れない。資料請求をして、新築住宅に関する様々な情報を集めるかも知れない。いずれにしても、あなたのライバル店との比較のボードを、自分自身で用意することになってしまう。
一方、クリーニング店と洗濯機を比較のボードに挙げれば、買い手が考えるのは、あなたのお店と洗濯機であって、あなたのお店と他のクリーニング店ではない。よって、あなたのお店が洗濯機に勝ち得るメッセージを効果的に訴求できれば、買い手はあなたのお店に軍配を上げることになる。クリーニング店とクリーニング店の勝負では訴求点が難しいとしても、クリーニング店と洗濯機であれば訴求点は明らかにできる。
どのような商品やサービスであっても、買い手の視点に立って考えてみれば、どういった視点で買い手が比較検討を行っているのか理解できるはずだ。あなたは、今まで自分と同じ業界や同業他社との比較に躍起になっていたかも知れない。しかし、実はそうではない可能性も高いのである。

顧客と向き合う

このような視点を持つのは簡単そうで難しい。あなたは売り手であって買い手ではないからだ。いくら「買い手の視点を持つ」と言われても、売り手の視点から抜け出すのは容易なことではない。
しかし、あなたが現実に既にビジネスをやっているのであれば、「顧客」は既に存在しているはずだ。その顧客に、実際に聞いてみれば良いだけの話しである。何と比較しているのか、何と迷っているのか、どうして当店で買ってくれたのか。
顧客の生の声というのは、宝のような存在である。そして、あなたが本当に顧客の気持ちを知りたいと思えば、顧客は心を開くもの。是非、今すぐにでも聞いてみて頂きたい。ひょっとしたら、意外な回答が返ってきてびっくりするかも知れない。でも、そこに買い手の視点に立った効果的な販売促進のメッセージが潜んでいるのである。

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