農商工連携を成功に導くために(前半)

セミナー講師陣の売上UPノウハウ集

先日、団体職員向けに、農商工連携を推進するための研修の講師を務める機会があった。講義の中で自己紹介を兼ねて、受講者各自の農商工連携への関わり、あるいは農商工連携の事業推進への思いなどを話してもらった。
思いのほか、農商工連携に関わる課題が多く挙げられたので紹介したい。次に集約されている。

[課題1]農商工連携の承認申請の書式が複雑すぎて、中小企業者や農業者だけでは記述することが困難である。
[課題2]特に、農業従事者は経営に関する意識や改善意欲が弱く、中小企業者がパートナー探しに苦労する。
[課題3]承認されて助成金が得られても、対象期間中は販売活動で売上や利益を得てはいけないのでは実効ある活動が限られる。

上記の課題は、現場で支援する立場の各種団体職員の本音が聞かれた貴重な意見だと思う。我々コンサルタントは、上記の課題を何となく認識していたのであるが、「やはり」と改めて認識した次第である。行政もこの辺りを改善してもらいたいものである。

[課題1]に関しては、行政も認識しているらしく、都道府県では農商工連携ファンドを設立し、申請書類の簡素化を試みているようである。これらのファンドは、全都道府県で設立されている訳ではなく、筆者が調べた範囲では、20程度の道府県で設立されているに過ぎないし、助成金額も中央官庁主体の農商工連携に比べて少額である場合がほとんどである。またこのファンドの実態は、国が道府県に給付しているのである。
農商工連携の申請への敷居が高いと感じている方々にとっては、調べてみて十分に価値がある制度であるし、チャレンジしてみることをお奨めする。

[課題2]については、どうしても日常的に経営に苦しんでいる中小企業経営者と比較して、作物を育て、収穫することが第一と考えている農業従事者とは温度差があるのは当然かも知れない。危機意識に差があるとも言える。また、農業経営ではJAという存在もあり、収穫さえすれば買い取ってもらえるという状況も、その意識の差の要因でもある。
しかしながら、客観的な危機的状況に中小企業との大差はないと思われる。すなわち、日本の農業あるいは農家が置かれている状況は、私が言うまでもなく、このままでは多くが生き残れない。農家への戸別補償も「焼け石に水」状態であり、農家経営の抜本的な改革が必要である。
要は、農家に経営改革が必要であり、その有効な手段が、農商工連携や第6次産業化(1次産業+2次産業+3次産業)で、商業者や工業者と連携した新農業の創出が求められている。農家を説得するには、危機意識を訴えると共に、成功への道筋を明確に示すことが必要と思う。どちらかと言えば、保守的な人が多い農業従事者は、新しいことに躊躇しがちである。何をどのようにすれば、成功するのかを一緒に考えるのでなく、予め考えた成功プロセスを示し、どうしても仲間になってもらいたいと訴えるのである。私が出会った農業従事者はほとんどが、話は真剣に聞いてもらえる素朴な人柄の人たちである。真剣に話をすれば仲間になってもらえるはずである。

[課題3]は、農商工連携の対象期間では販売活動を行えないという、農商工連携が持つ制度の課題である。制度そのものは変えることは政府の仕事であり、我々には不可能である。しかし良く制度を解釈すれば、販売活動のための仕組み作りは、行うことが出来る。販売活動の仕組み作りとして、何を行うのかをじっくり考えれば、光明が見えてくるはずである。
例えば、販路開拓を行うとする。商談会や展示会を活用して、商談をするのは有効であるし、商業施設で試食会を行うことも自由である。また、販売目的でない、ホームページを作成することも有効な場合もある。このようなプロセスで、見込み客を獲得するのである。一般消費者では有り得ないが、販売店や卸業者では、良い商品であるなら、半年後に購入を約束してもらえるかも知れない。要は、販売の一歩手前までは、農商工連携の助成金の対象範囲であることを念頭において、活動計画を作成するのである。

以下、次回に続く。

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