人事制度で企業はよみがえる

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人事制度、とりわけ賃金制度は経営者にとって頭を悩ます課題です。特に悩ましいのが、旧来の年功賃金制度を採用している企業です。
企業の中には当然ながら、よく働く社員と、そうでもない社員がいます。社長にとってみれば、良く働く社員の給料を上げ、そうでない社員の給料を下げたいという思いがあります。しかし現実はその通りにはなりません。

よく働く社員の多くは若手のやる気に溢れる社員、期待はずれの社員の多くは古参のうるさ型あるいはやる気一切なし社員であることが度々出くわす例です。これには次のような理由があります。

中小企業では優秀な人材を雇用することは容易ではありません。せっかく若手のやる気がある優秀な人材を採用したとしても、そのような人材に報いる報酬を容易できなければ、さっさと退職して条件が良い企業に移りステップアップしていくでしょう。一方で、優秀でない社員、あるいはやる気のない社員は、職場を移るにも雇ってくれる企業は容易に見つかりません。従って、そのような社員は同じ会社に留まり年齢だけが高くなるのです。

 

このような事態を避けるために、よく働く若手社員の給料だけを上げることの弊害も多くあります。企業は一部の社員だけで動いているわけではありません。チームワークで動くのが企業活動です。給料が上がらないダメ社員はますますやる気を失い、給料が上がる優秀社員は、仲間はずれになりかねません。

以上のことが人事制度、とりわけ賃金制度のジレンマです。

 

あるメーカー、従業員100名程度の中小企業を訪問した時のことです。その企業は、毎月損益分岐点ギリギリの売上げ状況で、社長は毎月売上げ状況に一喜一憂です。例によって、やる気に溢れる若手社員と、やる気を失った給料だけが高い古参社員がいます。古参社員は、近頃社長に逆らってばかりで、派閥を作っているようにも見えます。

社長は私に、賃金制度を変えて、よく働く社員の給料を上げて、そうでない社員の給料を下げたいと言いました。そのような給与体系を作って欲しいとのことです。いわゆる成果主義あるいは能力主義の人事制度です。

 

私は、少し考えました。その結果、「賃金制度のみを変えるのは、拙速になります。ここは我慢のしどころです。一部の社員が幸せになる制度よりも、少々時間がかかっても、多くの社員が納得できる人事制度を作る方が良いと思います」と答えました。

 

私の意図は、賃金制度、評価制度、昇進昇格制度など人事全体に関わる制度全体をセットとして改定すべきということです。賃金とは単に仕事の成果に応じて支払うというよりも、能力の高低、その能力の発揮具合、業務上の地位、社長のこれからの期待具合、あるいは過去の貢献具合などに応じて支払うというような性格のものです。しかも、賃金の背景を社員に十分に説明することも必要です。全員が納得することはあり得ませんが、兎に角、十分に説明すべきものです。

 

結局、その企業では賃金制度、評価制度、昇進昇格制度の全てを、試行錯誤の末に、二年を要して再構築しました。優秀な社員には企業幹部になるという地位で報い、そうでない社員には最小限の生活を保障されていると実感できるような制度を作り上げました。全くのダメ社員には、残念ながら会社を辞めていただくことを強く薦めました。

 

人事制度では拙速は禁物です。従業員は賃金にはとても敏感です。やる気のない社員だけが不幸になるのではなく、やる気のない社員も少しはやる気を持ってもらい、再チャレンジの道を残すことも必要です。もちろん、やる気に溢れる社員にはきちんと給与と地位で報いることが最も重要なのは言うまでもありません。

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