危機管理の本質とは(5) 実践的な訓練とは?

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■防災訓練のイメージ
前回は、羽田空港事故におけるJAL機のCAの咄嗟の
判断が危機管理の本質であり、その咄嗟の判断を生んだ
のは、実は日頃の鍛錬の賜物であるとお伝えした。

ところで、皆様は訓練というと、どういったイメージを
お持ちだろうか? おそらくは、自社の防災訓練、それも、
ビル管理会社主導による、シナリオが明確に用意されていて、
非常口から避難する訓練、あるいは、消火器を使う訓練
などが主であろうと推察される。

そして実は、こうした訓練は年に一回実施されるのが
一般的であろう。筆者が10年以上に渡って支援させて
いただいている、ある自治体の自主防災組織を対象とした
研修に参加される受講者に伺ってみても、年1回実施が
圧倒的多数である。おおよそ、こうした訓練を想起される
のが一般であろう。

■一般的な防災訓練と実践的な訓練の決定的な違い
年1回実施されるこうした訓練も非常に重要である。訓練に
よって、いろいろな気づきが得られるし、課題も得られるはず、
と言いたいところなのだが…。

実は、実践的な訓練の重要なポイントはここにある。我が国は、
訓練は実施するのだが、その後がどうもよくない、というか
機能していないのである。要は、「やりっぱなし」で、
実施した訓練を振り返り、検証し、何が課題だったのかを
徹底して究明しようとする姿勢に欠けるのである。 実は、
これはISOの世界でもずっと言われてきている点である。
すなわち、マネジメントシステムのパフォーマンスを向上
させるためには、継続的改善のサイクルを回す必要があるの
だが、その要であるチェック&アクションが弱いのである。

この点、筆者が、内閣府の調査研究業務で現関西大学特別任命
教授の河田惠昭先生とご一緒させていただいた際、河田先生が、
我が国は大規模災害を経験した後の検証が弱い、といみじくも
指摘されていたことを思い出す。

■実践的な訓練に必須の要素? AAR(アフター・アクション・レビュー)とは?
読者の皆様は如何であろうか? 訓練は実施したものの、
やりっぱなしで終わってはいないだろうか? 防災訓練を
実施した後、ちゃんと検証をなさっておられるであろうか? 
あるいは、訓練の何処に問題があったか、喧々諤々議論が
なされているであろうか? 次回に向けての改善のポイントは
どこにあるのか、きちんと把握しておられるであろうか? 
さらに言えば、一体今回の防災訓練は当初の目的を達成
できたと言えるのであろうか? つまり、訓練はやればいいの
ではなく、その訓練が一体何を目的にしていたのか? 
そして、何をもって目標が達成されたと評価するのかについて
明確な基準を設定していることが重要なのである。

目標設定と評価、改善テーマの抽出なくして、実践的な訓練
とは言い難い。このあたりは、実はアングロサクソン系が
めっぽう強い。ISOしかり、また、AAR(After Action Review
【アフター・アクション・レビュー】)という体系的な手法を
生み出したのもアメリカである。 つまり、「徹底的に検証する」
という姿勢が貫かれているのである。

今回AARについて詳細を述べるには紙面が足りない為、次回
さらに実践的な訓練の第2弾としてAARの詳細を述べてみたい。
また、訓練の内容について別の観点からも述べてみようと思う。

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