危機管理の本質とは(4) 羽田空港事故から何を学ぶべきか?

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■1月2日の羽田空港事故の概要
元旦にM7.6、最大深度7の能登半島地震で大規模な
災害が発生した翌日、信じられない光景が飛び込んできた。
羽田空港でJAL機が炎上しているではないか!
えっ、どうしたの? 嘘でしょう? と思わず目を
こすりたくなった。
とにかく、皆無事であってほしい。
祈るような気持ちでテレビの映像を見ていた。

幸いにも、新千歳発羽田行き516便の乗員・乗客379名は
全員無事だった。
残念ながら、海上保安庁機では死傷者が出てしまったが…。

国土交通省は、本事故を受けて緊急対策として、基本動作の
徹底指示、管制官による監視体制の強化、パイロットによる
外部監視の徹底、視覚支援、滑走路侵入に関するルールの徹底、
そして関係者間のコミュニケーションの強化という
緊急対策パッケージの柱を公表している。

この事故については、海外メディアでも取り上げられた。
例えば、犠牲者が出なかったのは、過去の航空機事故の徹底
調査により、乗員・乗客全員が機内の半分の脱出ドアを使用
して脱出するための90秒ルールが確立されていたからである
とするものがあった。
あるいは、それ以前のこととして、そもそも乗客が脱出する
ために必要な90秒持ちこたえられるよう、機体の耐性が
向上していたからであるとする指摘などもあった。

実際には、CA(客室乗務員)が機体左後部のドアを開けて
乗員・乗客を避難させたことが、一人の犠牲者も出さずに
済んだ大きな要因であると考えられた。

■「奇跡の18分」は本当に奇跡か?
乗員・乗客が全員無事だったことについて、海外メディアは
「奇跡の18分」と持ち上げた。実際に、あの機体の炎上を
見せられて、本当に乗員・乗客に1人も犠牲者が出ないと
考えた人はどれくらいいたであろうか? せめて、
犠牲者が一人でも少ないことを祈るのがせいぜいで
あったろう。

では、一体何故、一人も犠牲者が出なかったのであろうか?
結論から言えば、CAの災害イマジネーション力により、危機
管理が機能したからと言える。 したがって、私から敢えて
言わせて頂ければ、これは決して奇跡などではなく、日頃の
「訓練」、否、「鍛錬」の賜物である。もちろん、他にも90秒
ルールが機能した、機体の耐性が向上していた、さらには
乗客が手荷物を持たずに脱出したことなど複合要因が重なった
ことによるのであろう。

しかし、本質的には、CAの災害イマジネーション力で危機
管理が機能したことが最大の要因であり、このことは決して
奇跡などではないことを強調しておきたい。

■「危機管理」で重要な事
ここで重要なのは、「危機管理」なのである。既に以前の記事
(「危機管理の本質とは(1) 大規模災害は繰り返される?」)
にて、リスクマネジメント(狭義)とクライシスマネジメント
(危機管理)を明確に分け、危機管理下における災害イマジネー
ションの重要性を指摘した。

この事故は、正に、インシデント発生後の危機管理が機能した
事例なのである。 なぜなら、CAが左後部のドアを開けること
については、通常機長の承認が必要なのであるが、事故当時、
インターホンないし通信システムが機能せず、機長との交信が
できないという想定外のことが発生したからである。 この危機
管理下で、CAは自らの判断でドアを開放しているのである。
インシデントが発生した後は、危機管理下で、災害イマジネー
ションをフルに発揮して対応するしかない。だからこそ、日頃の
訓練がものをいうのである。

災害イマジネーション力を日頃から鍛え、想定外を可能な限り
なくすための訓練が、いざというときものを言う。今回の羽田
空港事故は、如何にCAが普段から訓練で鍛えられていたかを
如実に物語るものでもあるのである。

実際に、JALの経営幹部は、緊急脱出訓練の成果が出たのでは
ないかとコメントしている。

読者の中には、当社だって日頃から訓練はやっている、定期的に
やっていると考えておられる方も多くいらっしゃるであろう。
しかし、ここで敢えて問いたい。「その訓練は実践的ですか?」と。
次回は、実践的な訓練とはどういうことなのかについて考えてみたい。

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