危機管理の本質とは(2) 危機管理の要諦「災害イマジネーション」

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■災害イマジネーションとは?
前回は、災害に適切に対応するためには災害イマジネーションが
重要であることをお伝えした。では、改めて危機管理の要諦である、
災害イマジネーションとは何か?

例えば、もし、首都直下地震が発生して、乗車中の電車で急ブレーキが
かかったらどうなるであろうか? もし、つり革や手すりにつかまって
いなければ、おそらくは前方方向に身体が持っていかれ、転ぶどころ
では済むまい。スピードが出ていたら、体が飛んでしまって大けがを
するであろう。電車でつり革にも手すりにもつかまらずに、スマホを
いじっている乗客をよく見かけるが、これはいざ地震が発生して
急ブレーキがかかった場合にどうなるかを全く考えていない証左でも
ある。いわゆる、災害イマジネーションが全くないのだ。このように、
発災からの時間経過の中で自分の周辺で起こる災害状況を具体的に
イメージできる能力を災害イマジネーションという。

■災害イマジネーションがないとどうなるのか?
もう一つ、ではもし、超高層ビルのエレベーターに乗っていて
大地震が発生したらどうなるだろうか?

実は、首都直下地震が発生した場合、2.2万台が非常停止し、多数の
閉じ込めが発生するであろうと考えられている。普段使っている
エレベーターが緊急停止した後どうなるかイメージしたことなど、
ないのではないだろうか? 実際には、最新のエレベーターは
地震発生を感知すると最寄り階に停止する機能がついており、
非常電源装置も備わっているので、最寄り階で停止した後、速やかに
ドアを開けて脱出することができる。

ところが、である。震度6以上になると緊急停止がうまく機能しない
事例が発生する。大阪北部地震では最新のエレベーターでも
閉じ込めが相当の割合に上ったとの報告がある。しかも、ほんの
数年前のエレベーターはこの機能が備わっていない。最寄り階に
停止する最新機能もなければ、非常電源装置も装備されていない。
したがって、一旦閉じ込められてしまうと、エレベーター管理会社・
保守会社に非常電話で連絡できたとしても、最低1時間、東日本
大震災の例では、場合によっては9時間弱もの間、エレベーター内に
閉じ込められる事態となる。なぜなら、専門の技術者が安全を確認
できない限り、エレベーターを再開することができないとされている
からである。エレベーターという閉鎖空間に数時間もの間閉じ込め
られることをイメージしたことがあるだろうか? 
とても耐え難い時間である。

■もしもエレベーター内に閉じ込められたら?(恐怖体験)
もう20年以上は経っただろうか? 実は筆者は一度、地震が襲来
したわけではなかったが、病院のエレベーター内に3分間閉じ込め
られた経験がある。緊急ボタンを押しても何の反応もなく、緊急連絡
電話もうんともすんとも言わないのである。恥ずかしい限りであるが、
パニックに陥った。エレベーター内に閉じ込められていることを外に
伝えるために、ドンドン握りこぶしで扉を叩いて大声で伝えたのである。

この3分間は正に恐怖の3分間であった。いったい何故閉じ込め
られたのか今でも原因が分からないが、その時はうんともすんとも
言わなかったエレベーターの扉がなぜか3分経ったら勝手に開き、
外に脱出することができた。家族が、途中で消えてしまった私に
「どこに行っていたの?」と不思議そうな顔で質問してきた際には、
あまりの恐怖で言葉が出なかったこともあるが、どうせ、恐怖体験を
伝えたところで分かって貰えないであろうと半ばあきらめ気味で
あったため、返答しなかった。

しかし、今振り返ってみても、もし、あのまま扉が開かなかったら
と思うと、今でも恐ろしさで身震いしてしまうのである。以来、私は、
エレベーターに乗る際は、常に、もし緊急停止して閉じ込められても
大丈夫なように、そしてパニックに陥らないように、
常に最悪をイメージして乗るようにしている。

■災害イマジネーションを正しく持つことの重要性【備えるために】
このように、いざ災害が発生したら、刻々と変わる状況の中で
どのようなことが起こるのだろうとかという災害イマジネーションを
持てない限り、適切な対応はできないことが分かる。

最近では、エレベーター閉じ込め事故に対する災害イマジネーションが
広まりつつある。エレベーターの隅に三角形の柱状のものを目にした
方も多いのではないだろうか? 実はこれが、エレベーターが緊急
停止して閉じ込められた場合に備えた非常用グッズである。中には、
水や懐中電灯、食べ物や簡易トイレ等が入っている。いざ、大地震で
緊急停止して閉じ込められても、数時間は耐えられる最低限のグッズが
用意されている。しかし、このグッズもまだ全てのエレベーターに
用意されているわけではない。

このように、私たちは普段、いざ災害が発生したら何が起こるかに
ついて、なかなかイメージできていないのである。では、どうしたら、
災害対応力の基礎になる災害イマジネーション力を養成することが
できるのだろうか? 次回のメルマガではこの点について書いてみたい。

最後に読者に質問をして終わることにしたい。

もし、あなたが超高層ビルのエレベーターに乗っていて首都直下地震に
急襲されたら、どうしますか? 是非、災害イマジネーションを
働かせて考えて貰いたい。正解は次回のメルマガで。

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