危機管理の本質とは(1) 大規模災害は繰り返される?

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■なぜ大規模災害は繰り返されるのか?
これから危機管理の本質について連載したいと思う。
読者に少しでも危機管理の本質をご理解いただき、
今後の災害対策・災害対応・BCP・危機管理の
一助となれば幸いである。

今後数回は能登半島地震から危機管理の本質を考えてみたい。
その後、羽田空港事故に見る危機管理の在り方について、
数回に分けて考えてみたい。

さて、第1回目は能登半島地震を取り上げる。
1月1日に発生した能登半島地震は、1月末を迎えても
なお断水が続き、住民は困難な生活を強いられている。
東日本大震災の津波で両親と実家を失った身としては、
肉親を失い、また住み慣れた住処を追われた人々の
報道に接する度に本当に心が痛む。哀悼の意を表したい。

それにしても、である。1995年に阪神・淡路大震災、
2011年に東日本大震災、その後も熊本地震、胆振東部
地震と立て続けに大規模地震により甚大な被害を
被ってきたのに、何故また今度も大きな被害が発生して
いるのか? 一体、これまでの教訓は役に立たなかったのか?
という疑問が当然湧いてくる。

結論から言おう。おそらく、また他の自治体でこのような
大規模な地震が発生したら、同じように甚大な被害が発生し、
今回と同じように、あの時の教訓は全く役に立たなかった
のではないかという報道がなされているであろう。

それは何故か? 答えは簡単である。その自治体(自治体
職員といった方がより適切であろう)にとって、大規模地震が
初めての体験だからである。体験がなければ、大規模地震が
発生したらどのような被害が生じそうかイメージすることは
容易ではない。

もちろん、自治体は地域防災計画で地震や大雨・台風、
あるいはコロナウィルス等バンデミックが発生した場合に
ついて被害想定をしている。当然、建物やライフラインで
どの程度の被害が発生するかは予め織り込み済み、シミュ
レーション済みと言いたいところなのだが……である。

■リスクマジメントとクライシスマネジメント ~災害イマジネーションの重要性~
一般に、災害発生時を起点として、発災前の災害対応に
ついてはリスクマネジメントとされ、災害発生後の現実の
対応はクライシスマネジメントとされる。つまり、被害を
抑止したり、軽減したり、予知して早期警戒までは事前の
対策を講ずることができる。これがリスクマネジメントである。

一方で、発災後は、発生した災害に対して被害を評価して
緊急で対応し、その後復旧、復興という災害対策・対応の
プロセスを経る。こちらが、クライシスマネジメントで、
災害が発生した後は、現有のリソースで対応せざるを得ない。

重要なのは、どちらか一方に偏った災害対策ではなく、
災害発生前と災害発生後をいずれもバランスよく講ずる
ことが必要という点である。

対策は万全にやった。が、しかしである。今回の能登半島
地震もそうであるが、災害発生後のクライシスの状況に
追い込まれると、災害発生後に次々と生じる予測不能な
状態に何をしたらいいのか分からず、ただ漫然とその場に
立ち尽くすという、最も避けたい事態に追い込まれて
しまっているのではないかと推察できるのである。

具体的に置かれた状況下で、この後どんなことが起こり
そうかを先読みする力、災害イマジネーションの力が不足
していると考えざるを得ない。災害イマジネーションが
なければ、適切な対応はできないからである。

大規模災害は、備えていても、なお予想を超えてやってくる。
だからこそ、事前に災害発生を想定して、被害を想定し、
被害抑止や軽減、できるだけ迅速かつ正確に災害を予知し、
早期警戒をすることが重要で、事前のリスクマネジメントは
重要である、

しかし、災害発生後のクライシスマネジメントもまた非常に
重要であり、クライシスマネジメントについて、災害対応力を
向上させるための施策が非常に重要である。

今回の能登半島地震は、まさにこれまでの教訓が役に立って
いないのではないかとの指摘もある。だからこそ、災害
対応力を鍛えるための訓練や演習がこれまで以上に重要に
なってくると考えている。

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