苦境に直面すると
大震災の被災地企業への支援が始まった。
支援開始に先立ち、何回かその企業を訪問して、経営者へのインタビューを行った。
あの大震災である。しかも、最も被害が大きかったと言われる地域だ。
その地の企業は、ほとんど壊滅状況になったのだろうと推察される。
僕はヒアリングの中で、敢えてあの『大震災』には触れないようにした。
何となく、触れてはいけない、相手も触れられたくないと感じたからだ。
インタビューの最後に、経営者は次のように話した。
「私は震災後に、今までに最も成長したと感じています。震災前までは、漫然と経営を行ってきた。
震災後には色々なことがあった。その色々なことが、私を成長させてくれたように思います」
確かに、その経営者はそのように実感したのだろう。
僕は、彼が遭遇した苦境を詳しく知らないし、僕が想像し得る以上の苦労があったのだろう。
苦境に遭遇すれば、その苦境を克服しようとして努力し、その結果として、成長を促すことは容易に想像できる。
自分自身の経験で恐縮だが、僕は大企業に勤務するサラリーマン時代が長かった。
その頃を振り返ると、多くの苦労をした。
その苦労の多くは、人間関係であったり、上司・部下の関係であったりという気がする。
仕事そのものの苦労ではなかった気がどうしてもするのだ。
では、現在の仕事でどうかと言えば、その状況と逆だろう。
すなわち、人間関係での苦労よりも、仕事そのものの苦労が多い。
いや、苦労というよりも、費やすエネルギーが多大ということだろうか。
先ほどの仮説『苦境に遭遇することで、人は成長する』を当てはめると、現在の僕の人間関係力は、主としてサラリーマン時代に育ち、仕事そのものを遂行する力は、現在の仕事で育っている、ということになる。
何となく、自分で納得してしまう。
(終わり)
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