「会社の未来のため、今動く 成功する事業承継入門セミナー」レポート

2022年1月17日、千葉県産業振興センターにて「会社の未来のため、今動く 成功する事業承継入門セミナー」が開催されました。当日は、事業承継を検討している経営者や承継者の方に向けて、事業承継を成功させるための考え方や、具体的な方法をお届けしました。

セミナーの概要

テーマ:会社の未来のため、今動く 成功する事業承継入門セミナー

主催:千葉県産業振興センター

対象:企業の経営者・事業承継者など

所要時間:約2時間(14:00~16:00)

開催形式:オンライン

今回の講師を務めたのは、年間講演数200回超えの人気講師・大木ヒロシ氏(ジャイロ総合コンサルティング)。従業員を承継者に指名し事業継承をした自身の体験を豊富にまじえ、「なぜ今すぐ事業承継のために動くべきなのか」「事業承継を成功させるための考え方」などをたっぷりと語りました。

誰に事業を引き継ぐのか

事業承継とは、読んで字の如く、会社の経営を後継者に引き継ぐことを指します。中堅の中小企業は、オーナー社長の経営手腕が会社の基盤になっているケースが多数。「誰」を後継者にして事業を引き継ぐのかは重要な経営課題と言えるでしょう。

事業を承継の形態としては「親族承継」「従業員承継」「外部者承継」があります。それぞれの特徴についてみていきましょう。

親族承継

親族(おもに子供)を対象に事業を承継するパターンです。上手くいくケースが多く、なにより安心して任せられます。身内ということもあり、仮に失敗があっても納得できるという心理的なメリットもあります。

ただし、後継の候補は親の苦労を目の当たりにしているため、継ぎたがらない場合も多々あります。また、兄弟のうち一人が承継するため、家族間で軋轢が生じる恐れも。トラブルを避けるためには、相続資産と会社資産を明確に区別しておくのが大切です。

従業員承継

後継者としての条件を満たす自社の従業員に事業を承継するパターンです。長年そばで仕事ぶりを見ていれば能力は明白なので、無理なく任せられます。

ただし、「透明性のある基準」を示し、ほかの従業員が納得する方法で選定する必要があります。また、血族以外の後継で会社が潰れたり、業績不振があった際、納得し難いというデメリットも。

外部者承継

取引先や他社から、優秀者をヘッドハンティングする方法です。実績が明確であり、業務能力については問題ないケースがほとんどです。また、同業種間のヘッドハンティングであれば、業界内から信用を得ているため、承継の事業がスムーズに運びやすい点もメリットです。

慎重に人選を行わなければ、会社の方針が元社長の思惑から大きくずれて、旧来の社員から反発が起きる恐れがあります。また、従業員承継と同様に、血族以外の後継で会社が潰れたり、業績不振があった場合に納得し難いというデメリットもあります。

承継者のベストな年代とは?

業務改善につながりやすいのは、仕事人としての円熟と時代に沿った考え方のバランスがとれた40代ぐらいの承継者です。デジタルや新しいテクノロジーに対する抵抗感が少ないため、今後の企業経営に必須となるDX化においても、積極的に手腕を振るってくれるでしょう。

なぜ事業承継に早めに取り組むべきなのか

事業承継は、経営のバトンタッチとも言えます。バトンタッチが上手くいけば、さらなる業績向上も可能です。

現在、日本では経営者の高齢化が進んでいますが、自らが育てた会社を他者に譲ることに抵抗を感じる方も。「次世代に引き継ぐことで、居場所がなくなってしまうのでは」と手放すことを恐れる経営者も少なくないでしょう。しかし、事業承継への取り組みを後回しすると、結果的に引き継ぎがうまくいかず会社の倒産に至るケースもあります。円滑に事業承継ができれば、経営の全体像を見渡し、社長に助言をするという「元社長」ならではの役割が生まれるのです。

長引くコロナ禍で時代の変わり目と言われる今こそ、次世代へのバトンタッチの良いタイミングです。旧来のやり方では、これから起こる様々な変化に対応するのは難しいでしょう。

ゴーイングコンサーン

ゴーイングコンサーン(Going concernn)とは、「継続企業」という意味の言葉です。一度創られた会社は人間と違い、後継さえいればいつまでも継続することができます。会社とは雇用の場であり、社会に必要な商品・サービスを提供する生産活動の源。企業の継続を目指すことは、経営者にとって最も重要な責務と言えるでしょう。事業承継をスムーズに進めることで、自分の作った会社が、永続的に社会の利益を生み出す可能性もあるわけです。

会社を存続させるために必要な「DX化」

DXとは、Digital Transformation(デジタル トランスフォーメーション)の略。簡単に言うと、「IT技術の浸透によって、人々の生活をより快適に変化させる」ことです。これからの時代は、DXの活用によってコストを削減し、生産性や利益を向上させることが経営の肝となります。

DXを活用すれば、営業活動にかかる移動コストや、事務所の維持費用なども大幅に激減させられます。Zoomなどを活用したDX化の動きは、新型コロナウイルスの感染拡大が終息しても継続すると予想されます。DX化を推進するためにも、若い経営者に事業を承継していくことが必要でしょう。

事業承継への着手

事業承継ではじめに取り組むべきは、事業を受け取ることの意味と価値について、現社長と後継者の認識をすり合わせることです。ここで話し合いが円滑にできれば、元社長と新社長の認識のずれを防ぐことができます。後継者のミッションを明確にしておくと良いでしょう。

  • 立ち上げ・・・新規事業や新しいプロジェクトの立ち上げ
  • 再建・・・深刻な状況に陥っている事業の救済
  • 成長の促進・・・事業の急拡大に対応
  • 再編・・・「かつては市場のリーダーだったが、現在は問題を抱えている」という企業の活性化
  • 成功の持続・・・高く評価されていた前任者の成功を持続させる

上記のどれを求めるのかをはっきりさせておくことで、するべきことも整理されます。

事業承継を成功に導く5つのポイント

ヒトの承継

後継者を決めることです。いきなりの指名や引き継ぎは失敗のもと。承継者と定めて3年〜5年ぐらいをかけて計画的に譲ることが大切です。徐々に周知していくことで、反対者の少ない雰囲気を醸成できます。

モノの承継

会社の資産価値を明確にしておきましょう。税務対策が重要なため、税理士などの専門家に早めに相談することが必須です。

お金の承継

赤字でも事業承継は可能です。引き継ぐ際は、ありのままの経営状態を伝えましょう。こちらも税務対策が重要なため、税理士などの専門家に早めに相談することが必須です。

技術の承継

言葉に表すのが難しい、いわゆる「暗黙知」化している知識は、一緒に業務をやることで引き継ぎましょう。デジタルツールなどを活かして可能な限りマニュアルに落とし込み、平準化しておくのも重要です。

顧客や顧客情報の承継

顧客との関係性など、これからの関係を円滑にするための情報を伝えます。

事業承継に失敗しない後継者の育成

セミナーでは、後継者の育成のポイントとして、下記が紹介されました。

  • 従業員よりも家族を選ぶ方が良い
  • いきなりの指名はしない
  • オーセンティック・リーダーシップ(その人なりのリーダーシップ)を尊重し、個人の適正に見合った社長訓練をする
  • 親族が承継する場合、幼少の頃から職場になじませ意識を持たせる
  • 親族承継で、外部で修行をしてから入社させる場合、勤め先は同業で地域が離れている会社を選ぶ
  • 最低限の会計知識は必須。BS(貸借対照表)・PL(損益計算書)・資金繰りを理解しておく
  • 自社に入社後は、決済と採用を経験させ、社内を掌握させる
  • 一度引き継いだら、経営危機でない限りは決して口出しをしない

事業承継における税務対策のポイント

事業承継に欠かせない税務対策。セミナーで紹介された下記のポイントを念頭に置き、税理士などの専門家に相談しましょう。

  • 自社評価額が高い場合、経営権に影響のない範囲で従業員持株会に株を譲渡
  • 経営者から会社に貸付金がある場合は、貸付金を株に交換して評価額を引き下げ
  • 納税資金が足りない可能性を見越し、保険・役員退職金で生活を守る
  • 税金問題の解決策としての社団法人「プチカンパニー」で自己財産を管理
  • 事業承継税制を活用

事業承継に向けて一日も早いスタートを

現在60代の経営者が、10年後も今と同じように現役で働くことはできるでしょうか。まったく同じ体力で、時流に乗りながら経営を続けるのは難しいと感じる方もきっと多いはず。事業承継に向けての準備は、時間がかかるものです。スタートは早いに越したことはありません。

自分の手で大切に育ててきた会社がいつまでも社会とともに在り続けられるよう、事業継承に向けての取り組みを始めましょう。ジャイロ総合コンサルティングでは、事業を引き継ぐ次世代の経営者に向けたセミナーを用意しています。後継者の育成でプロの力を借りたい方、指名を受けこれから会社を発展させていこうと考えてる方は、ぜひお問い合わせください。

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