「フィジカルポイント」まだ「大丈夫」は遅すぎる。
唐突な話かもしれないが、こんな話がある。
「大きな湖があった。ある時、その湖に小さなハスの葉が一枚現れた、そのハスの葉は変わった性質で1枚が1日で2枚になる。要するに1日で2倍になる勘定だ。
困ったことにハスの葉で湖面が覆われてしまうと湖の魚は酸欠で死んでしまう。だから、漁師達はちょっと心配になった。それでも湖の大きさを考えれば容易に湖面が覆われてしまうとは思い難かった。
やがて漁師達はハスの葉のことは忘れ、日々の漁にいそしむようになっていった。その間もハスの葉は増え続け11ヶ月と30日が過ぎた、後1日で1年が過ぎる時には、さしもの大湖も湖面の半分がハスの葉に覆われていた。
漁師達は「もうすぐ1年が経つと言うのにまだ半分しか覆われていない」これなら当分大丈夫だと安心したような顔つきで家に戻り寝てしまった。」
翌朝、目を覚ました漁師達の目に映った光景とは?
賢明な諸氏は既にお分かりと思うが、湖面はハスの葉に覆われ魚は酸欠で死に始めていた。この程度のことは理屈としては皆分かっている。しかし、感覚的には分からない。「分かっちゃいるけど、止められない」の類かも知れない。
けれど人はしばしば感覚的に決断をする。
「何となく、まだまだ大丈夫」という感覚に合理性は無い。
最後の一晩で湖が覆われ、最後の1滴が大崩落を引き起こし、最後の1グラムの重みが大破壊につながる限界点、それがフィジカルポイントだ。
店の魅力は売上の下げに応じて加速度的に下がる。売上の10%マイナスは店の魅力を5%程度しか引き下げないが、20%の売上低下は魅力度を40%以上も引き下げてしまう。
最盛期の売上に対して半分近くの売上になってしまった店が後10%下げたら、店の魅力は限りなくゼロに近くなる。こうなったら後は空き店舗になるしかない。
最盛期に比して50%程度の売上規模に落ち込んだ店に、今夏は厳しい状況が覆い被さっている。しかし、今期は1%も売上を下げることは出来ない。なぜなら地域商店も商店街もまさにフィジカルポイントにあるからだ、このまま見過ごせば、中小小売業の大崩落が始まってしまう。
出来ること、やるべきことは今やる、それも集中して。それ以外にブレークスルーは開かない。
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