フランチャイズ本部構築のポイント(1)

フランチャイズ展開を図りたいという企業家が多い。確かに、事業拡大の方法としてのフランチャイズチェーン(以下、FC)は、多くの企業家が目指す方法ではある。しかし、無理な店舗展開で倒産したという本部も多くあるのは事実である。それでは、無理な展開をしなければ良いの
ではないかという理屈になるが、そんなに簡単な話ではない。ここに
FCの抱える本質的な問題が潜んでいるのである。ここでは、フラン
チャイズ本部構築のポイントを述べる中で、この課題について考えて
みたい。

フランチャイズ本部展開の目的を再確認しよう!

一般に、他社の資金を活用して自社の店舗展開を図るのがフラン
チャイズ(FC)であり、自社で資金を作って店舗展開できるスピード
とは比較にならないスピードで、多店舗展開できるのがフラン
チャイズの良さと考えられている。

したがって、急速な成長が期待できるのであるが、私がフランチャイズ展開を図りたい企業家に必ず、しつこいほど確認するのが、「あなたはFCで何をしたいのですか? 何が目的ですか?」ということである。
大抵は、「会社を大きくしたい、売上げ増を図りたい」という答えである。それだけの目的なら、FCは必ずしも最適解ではないということを忘れてはならないと思う。
私が考えるフランチャイズ展開の最小限の目的は、次の通りである。

1.自社の事業モデルは社会の発展に大きく貢献しており、社会貢献の規模を拡大したい。
2.自社だけでは、達成できない事業モデルを早期に作り上げたい。
3.経営的に苦境にある企業に新たなビジネスチャンスを提供したい。
4.自社の経営ノウハウを広めることで、独立を目指す個人を支援
したい。

上記の全てが満たされる必要はないが、3つは該当することが必要である。

まず、1の「社会貢献」であるが、全ての企業は社会貢献しているだろうか。社員を雇用するだけでは社会貢献とは言えない。本当に顧客から「ありがとう」と言ってもらっているだろか。

2の「自社だけでは達成できない事業モデル」という意味は、自社と同じ業界・業種・業態の企業を、フランチャイジー(以下、ジー)に想定していないかを問うている。本部とジーとは、相互補完の関係にあり、おのずと役割は異なる。全く異なる業種・業態に企業がジーに加盟することは少ないだろうが、相互補完ということでは、少し異なる業種・業態であるというのが理想である。

3の「苦境にある企業へのビジネスチャンスの提供」は、広い意味の
社会貢献ではあるが、苦境にあるということは、経営力が低下しているということであり、経営力のエンジンとしてのフランチャイズ加盟が、彼らには新たなチャンスとなるのである。

4の「独立を目指す個人を応援したい」の場合は、企業だけでなく、個人も視野に入れることになる。個人といっても該当する業界や業種に無縁の人ではなく、同業界に勤務している人などを指す。社員であったので業界知識はあるが、経営ノウハウがない人である。

このように、再度フランチャイズ展開の目的を確認することから、見直すことを薦めている。

事業ノウハウがあるか

大変失礼な言い方になるが、次に私が尋ねるのは「あなたの会社は
事業ノウハウをお持ちですか」ということである。もちろん、業界で自社事業を展開されておられるので、事業ノウハウを持っているはずであるが、他に教えられる事業ノウハウという意味である。

俗に、「3・2イヤーズ・ルール」と呼ばれるものがある。

直営店を3店、2年間運営してきた実績という意味のフランチャイズ業界で知られたルールである。3店舗を2年間運営しているなら、必要最小限の事業ノウハウを持っているはずであり、他に教えるノウハウを
持っていると認められる。しかし、事業展開を急ぐあまり、不測の事態の対処方法も含めて事業ノウハウを十分に持たずに、フランチャイズ
展開を行おうとする事業者も多いのが現状である。そこまでは待てないという事業者も多いのは事実であり、そのような場合に私は、「自社の従業員のために、業務の“見える化”を行うことが必要ですので、まず
これを行いましょう」と薦める。

“見える化”とは、すなわち、マニュアル化である。

自社のマニュアルもない時点で、フランチャイズ展開を図るのは、全く無謀といえる。

本部スタッフの育成

言うまでもなく、フランチャイズ本部にはスーパーバイザーをはじめと
する本部スタッフが必要となる。この本部スタッフは、人(すなわちジー)とのコミュニケーションが主な役目である。

何かとジーは、本部スタッフを頼りにするし、頼りにならない本部
スタッフは、それだけでスタッフとして失格である。コミュニケーション
が主な役目であると述べたが、企業の中では、業務に忠実で、実務に
長けた人は多いが、コミュニケーションに長けた人は貴重であり、数は多くないのが一般的であろう。コミュニケーションに長けるとは、何も
雄弁であったり、説得力があるという意味ではない。人の話を聞ける
ということである。人の意見の真意を理解し、自分なりの言葉で、人に伝えられるという意味である。

誤解されがちであるが、コミュニケーション能力は生まれつきではない。育成できる能力である。どのようにして育成されるのかは、それぞれ
ではあるが、一般則が存在する。
まず、コミュニケーションの原則を教える。
コミュニケーションの原則とは、“聞く”“尋ねる”“認める”である。
それぞれのスキルの原則を教えることからコミュニケーション能力の
育成が始まる。ここでは、詳しく述べる紙面の余裕はないが、このような資質が備わった人材が自社におり、その人材に本部スタッフの役割を担わせるという覚悟が経営者には必要となる。

フランチャイズ展開の初期段階では、せいぜい一人の人材を見いだすだけで良い。その人材を本部スタッフに指名し、ジーとのコミュニケー
ションを全て任せることが必要となる。社長自らが、この役目を担う場合もあるだろうが、私は好ましくないと考える。社長は、最終の意思決定者であり、ジーにとっては本部への不満も、要求も伝えにくいポジションである。できれば、社員から一人の本部スタッフを指名したい。

(続き(2)を読む)

 

関連リンク

○フランチャイズ本部構築コンサルティング
○コラム『フランチャイズという選択肢』
 

 

 

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