地域商店街の再生
今後、10年で一人暮らし世帯は25%を超えることになると言う。4世帯に1世帯が一人暮らしとなる勘定だ。
深刻だというのは、50代以上の高齢者の一人暮らしが急増しているからだ。若者の気ままな一人暮らしとは訳が違う。支え合って生きざるを得ない年齢になって、よんどころ無い事情での離別の末の一人暮らしである。
あるTV番組の特集でそうした人にインタビューを行っていた。60代の男性だったが、聞けば、ここ3日間というもの誰とも口を聞いていないという。今日のインタビューで3日ぶりに人と話したのだった。
70代の一人暮らしの女性は冬でもドアを開けたままで寝る。何故かというと、自分が死んでしまった時に誰にも気づかれなく何日も放って置かれるのが嫌で、危険を承知でドアを開けているのだという。
人が生きるというのは生物的に生きることより、社会的に生きることの方が大きいような気がする。我という存在も他者があって初めて成立するからだ。だから、誰とも接触が無いまま生きつづけることは酷く深刻なことのように思われる。社会から疎外され、誰にも相手にされていないと思った時に自殺がよぎるのかも知れない。
3万人を超える自殺者の過半は酷く孤独で寂しかったのではなかったか。
都市の片隅の小さなアパートで死後数週間たって発見された老人の遺体の傍に小動物の死骸があった。友ともつかないペットであろう。しかし、彼は最後の刹那にその小動物に何度も話しかけたのでないかと思う。
都市に人は溢れる程に行き交っている。けれど、我の知ったる者は無く、我を知ってる者も無い。都市は限りなく無機質となり、行き交う人はことさらに無感動を装う。これが理想の都市だとすれば、我々は大きな誤謬に気づかずにいる。
高齢化社会を生物学的に捉えているだけの政治体制には限界がある。高齢化社会にむけた、心の都市づくりを考えざるを得なくなっているのではあるまいか。
街とは人が出会い、ふれ合い、慈しみ会う場所であることが理想なのではないか。
経済の不調の原因として個人金融資産が高齢者に偏り、動いていない事が上げられる。
高齢者からすれば将来が不安で使いたくとも使えないという。しかし、使わずに貯めるだけでは不安は拭えまい。日本の高齢者はヨーロッパの高齢者と比較すると4倍以上の貯蓄高だという。けれど、これは、豊かさでは無く、不安と不信の度合いを表しているに過ぎない。
高齢者にとって安心とは信用できる他者との関わりが中心となる。それは肉親であり、親戚縁者ということになるが、実は毎日ふれ合う他人との関係が良好である方が安心感を強める。
安心出来る他人とのふれ合いの場として以前は地域商店街があった。そこに行けば、馴染みの顔があり、おのれの居場所もあった。今、その商店街が危機に瀕しており、そこから高齢者の不安と不信が高まっていったのでないかと思う。
地域商店街の再生こそが、地域再生の要であり、わが国の21世紀的な課題の一つではないかと思っている。
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