「ウィズコロナ・アフターコロナを生き抜く!!事業再構築のポイント」開催レポート

いわゆる“コロナ禍”が始まり一年以上が経過しましたが、依然として収束が見えない状況。あらゆる業種において従来型の事業展開やビジネスモデルのあり方が見直されています。

そんな中、経済産業省による「事業再構築補助金」の公募がスタートし、改めてこれからどうしていくべきなのかを考えている中小企業も多いでしょう。

今回は、新潟県の三条商工会議所の主催で行われた「ウィズコロナ・アフターコロナを生き抜く!!事業再構築のポイント」のセミナーレポートをお届けします。

企業倒産のニュースは、決して人ごとではありません。2時間あまりのセミナーには、コロナの影響下で中小企業が生き抜いていくためのヒントが凝縮されていました。

セミナーの概要

テーマ:ウィズコロナ・アフターコロナを生き抜く!!事業再構築のポイント
対象:企業の経営者など
所要時間:約2時間(14時〜16時)

セミナーはオンラインにて開催されましたが、受講者は三条商工会議所の会議室、またはZoomでの参加が選択可能。

ジャイロ総合コンサルティングの渋谷雄大講師によって、コロナ禍を生き抜くために必要な考え方や、事業再構築補助金を活用するためのヒントが語られました。セミナーのエッセンスをご紹介します。

DXをフル活用して固定費を変動費に

DXで経費節減

事業再構築において、DX(デジタルトランスフォーメーション)化は一つの大きなテーマです。ご存知の通り2021年9月にデジタル庁が設置されることもあり、これからますますDX化は進んでいくでしょう。

唐突に登場したような印象のあるDX化という言葉。つい難しく考えてしまいますが、実はシンプルなことです。今やスタンダードになりつつあるZoomの活用も、DX化のひとつに挙げられます。誰しも知らず知らずのうちに、DXに馴染んでいるのです。

DXを活用すれば、移動費・出張費・時間コストなどを大きく削減できるのは言うまでもありません。業績の良い企業は、DXを活用し経費の見直しを行っています。今までなんとなく使っていた経費を抑え、効率を良くすることが事業再構築の第一歩です。

例えばジャイロ総合コンサルティングは、研修をオンライン化することでこれまで1〜2日がかりだった出張研修を、講師の自宅からでも開催できるようにしました。これにより、1日に複数の研修も対応できるように。大きな効率化、DX化の例と言えるのではないでしょうか。

売り方を変えるだけでいい

事業再構築をするなら、売り方の改革をするのが一番手っ取り早い方法です。コロナ禍で売り上げを伸ばしている企業は、新しい商品やサービスを作っているのではなく、売り方を変えているケースが多いのです。今ある商品の売り方や、営業の仕方などの演出を変えることで、生産性のアップがはかれます。

コロナの影響下で新しいもの作るのは、非常にリスクが大きいこと。不安定な状況が続く今は、リスクを抑えることが何より大切です。

DX化によってもたらされるメリットのひとつに「商圏の崩壊」があります。これまで、交通費などの関係で営業できなかったエリアが、Zoom営業によって商圏に入るのです。やっていること(サービス内容、商品)は従来のまま、営業の仕方や提供の仕方を変えることでターゲットが広がり、商売のチャンスも増えます。

新しい商品・サービスを考える前に、まずは固定費を変動費に変えられないかを検討してみてください。いきなり新しいものを開発して、売り上げを作ろうとしても難しいでしょう。DX化の波に乗ることで、無駄な費用が削れるだけでなく、ビジネスのチャンスがぐっと広がります。

飲食店DX化の鍵は「ゴーストレストラン方式」

DX化によって飲食店を再興させる有効な手段のひとつに「ゴーストレストラン方式」があります。ゴーストレストランとは簡単に言えば、実店舗を持たない飲食店のこと。別のお店の厨房を間借りして調理し、デリバリーなどを駆使してユーザーに提供します。

たとえば、中華料理店として実店舗を経営しているが、ネット上に唐揚げ店などの別のお店を持つといったスタイルがこれに当てはまります。

これまでは、お店の席を埋めたり回転率を上げたりすることが重視されていました。しかし、今は厨房をいかに稼働させるかが肝心です。必要な調理設備さえあれば、中華料理店が唐揚げ店をすることは可能でしょう。ゴーストレストランは、ネット上にノーコストで別のお店を持てる手段なのです。

例えば、中華料理店は元々の店主が運営し、唐揚げ店はネットやSNSで募った若者を採用して働いてもらうなどの方法も。副業可能な人材を探して業務委託のネット店長を任せることで、人材の活用につながるだけでなく、厨房が有効活用できます。

ゴーストレストラン以外にも、副業で働きたいデジタルネイティブ世代の人材を活用し、DX化に成功している地方産業の例が増え始めています。PCやスマホに苦手意識のあるシニア世代は、ネット関連の実務をネイティブ世代に任せてみるのも手です。

PDCAからPDRへの変化

これまでビジネスでは当たり前の手法とされていた「PDCA」。実はこれも、コロナ禍によって見直すべきもののひとつです。PDCAサイクルは、先が読めない時代には不向き。Plan(計画)している間に状況が変わるからです。刻一刻と情勢が動く今は、PDCAから「PDR」にシフトする必要があります。

今の時代には、実行しながら軌道修正をするスタイルがマッチします。そこで注目されているのがPDRなのです。PDR法とは「入念に準備して、実行し、結果を振り返る」仮説検証を中心にしたモデル。

Prep(準備)→Do(実行)→Review(振り返り)を繰り返します。

特にPrepが重要とされており、目標や目的、手順、デメリットの想定などを原則30分以内で行うのがコツです。情勢が変わりやすい今は、2週間単位でPDRを考えるのがおすすめです。

この方法で注意したいのが、Doの最中にReviewをしないこと。多くの人は、途中経過で疑問が生じ、一旦立ち止まろうかと考えてしまいます。しかし実行している最中は振り返らず、とにかく準備した通りに動くのがポイントです。

そして、Reviewの段階で実際にやってみた振り返りを細かく行い、次のタームのPrepに反映させるのです。これを回し続けることが、コロナ禍の業績向上に大きな力を発揮します。

大型倒産によって見える未来

これから懸念されるのが、大企業・中堅企業の倒産です。大型倒産が相次ぐと、雇用が維持できなくなり、若い人たちが大都市から地元に戻ることになるでしょう。

若者が地元に帰ると、地方では以下のような変化が予想されます。
1.治安が悪くなる
若い人たちの働く場がないため、高齢者を狙った犯罪が増えるでしょう。セキュリティーの体制や見守りの仕組みが見直されます。

2.企業・創業が増える
務める場所がないことから、フリーランスなどの形態で一人で働く若者が増えます。後ろ向きな企業・創業と言えるでしょう。

3.ニートが増える
地元に働かない若者が増え、親世代が仕事を辞められない状況が生まれます。

 

これらの変化が起こった時に、どう事業再構築の中に組み込むのか。地方の中小企業には、変化を予想し、ビジネスに活かす力が求められます。

これからの事業再構築は、まだ市場に出てきていない需要を掴むことが必要です。コロナ禍以降、生活スタイルが大きく変化しているので、過去の延長線上に有益なものを作るのは難しいでしょう。

まずは表面化されていないニーズを想像し、それを3つほど事業化するのがおすすめです。1点集中を避けてリスク分散をしながら、“当たり”を探していく姿勢が大切です。ここでの注意点は、外れてしまった時の赤字を防ぐため、この3つの事業に固定費をかけないことです。

それぞれの事業に相乗効果は必要ありません。事業の関連性が高いとリスク分散にならないからです。今現在の業種と関係の深いビジネスは、結局鳴かず飛ばずになる可能性が高いため、新しい分野を切り開くのが有効でしょう。

事業再構築補助金について

ハードルが低いのは「業態転換」

セミナーの中では、経済産業省による「事業再構築補助金」についても言及されました。
これは、中小法人や個人事業者のための一時支援金。事業再構築にあたり、給付申請を検討している企業も多いでしょう。

 

今回の補助金には、以下の種類があります。

  • 中小企業(通常枠、卒業枠)
  • 中堅企業枠(通常枠、グローバルV字回復枠)
  • 緊急事態宣言特別枠

 

事業再構築の類型は以下の通り。5つの中のいずれかに合致すると対象になります。

  • 新分野展開・・・新たな製品等で新たな市場に進出する
  • 事業転換・・・主な「事業」を転換する
  • 業種転換・・・主な「業種」を転換する
  • 業態転換・・・製造方法等を転換する
  • 事業再編・・・事業再編を通じて新分野展開、事業転換、業種転換または業態転換のいずれかを行う

 

一番ハードルが低いのは「業態転換」です。これは前述した「売り方を変える」やり方に当てはまりやすいからです。対面販売からオンライン販売、集合研修からオンライン研修などのように、DXを活用すれば業態転換しやすいでしょう。

「企業の思い切った事業再構築を支援」と謳っている点からもわかるように、今回の事業再構築補助金は、企業側に明確なビジョンや高い意欲が求められています。比較的手軽に受給ができる持続化補助金とは異なり、かなりハードルが高いと考えてください。

※詳細は、事業再構築補助金事務局ホームページ

採択の可能性を上げるには?

採択の可能性をあげるためには、以下を心がけましょう。

  • 第一次公募に間に合わせる
  • パンフレットの事例を読み込む

今回は2021年3月26日に第一次公募が開始され、4月15日から申請受付開始、4月30日に申請締切という比較的タイトなスケジュールです。補助金をスムーズに受給するコツは、できるだけ第一次公募に間に合わせること。補助金は、開始直後が一番採択率が高い傾向にあるからです。

特に近年は、受付期間を短くして本当にやる気のある人を集めたいという政府の意向が見え隠れしています。日頃からこまめに情報収集していれば、いざ公募の告知があった時にスピーディーに申請でき、意欲のアピールにつながるでしょう。

経産省のHPからダウンロードできるパンフレットを見ると、給付の対象となる事業の例が多く掲載されています。補助金を取るには、これらの事業例をよく読むことが大切です。例は政府の意向を明確に表しているため、挙げられているケースに近い方が補助金が採択されやすい傾向にあります。

4Pマーケティング

セミナーの終盤、これからの事業再構築に欠かせない、マーケティングで押さえておくべき「4P」についての紹介がありました。

 

4Pとは・・・

  • 商品(Product)視点を変える
  • 価格(Price)に勇気を持つ
  • 顧客への購入機会(Place)を用意する
  • 販売促進(Promotion)を実行する

 

高度経済成長期は商品と価格に重きが置かれていましたが、今は販売促進に力を入れることが重要です。SNSやネットの発達により、プロモーションにお金がかからなくなったからです。

これまでは商品を作る→売り方を考えるという順番でしたが、今は真逆の手法が効果的とされています。商品を生み出す前に、買い手を見つけるのです。

まずはSNSなどで既存の商品やアイディアを発信する→顧客になり得る層が反応してくれる→反応を汲み取った商品・サービスを作る

これが成功の鍵です。

プロモーションを起点に、反応してくれた人たちが求めるものを形にしていく。これが新しいスタンダードとして徐々に浸透しつつあります。

最後に

コロナによって、否応なしに様々なことが変化していく時代です。新しい常識に上手く適合していくことこそが、事業再構築を進める上での大きなポイントになるでしょう。

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