自治体の情報システム構築に向けて(西村伸郎)

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全国に地方自治体は1800あり、それぞれの自治体では個別に膨大な情報化投資を行っている。私も某自治体の情報システム構築の支援を行っている。それらの経験から、自治体システム構築あるいは維持に関して考えられる問題点が多くある。次が挙げられる。
1.自治体職員
自治体には情報システムの専門家が少なく、どうしてもシステムベンダー側との知識・認識ギャップが生じており、システム構築・維持の非効率が生じる。
2.国の度重なる制度変更
国の制度変更が頻発し、自治体に要求されるシステム変更の度に、膨大な費用が発生する。
3.入札システム
公的組織である自治体では、入札システムにより業者選定が行われることが多く、真に自治体にとって有効なシステム構築な業者選定が行われるとは限らない。
4.セキュリティ・安定性への対応
住民情報を取り扱うという特殊性のゆえ、セキュリティ対策と安定性(システム停止対応)が万全であることが要求され、一般企業以上に情報漏洩や安定性への施策が必要と認識されことで、コストアップの要因となる。

このような問題点に対して、我々のような情報系コンサルタントはどのように対処すべきか、果たして対処することが可能なのか考えてみたい。

1.自治体職員

情報システムの専門家として、自治体に雇用されるケースはまれであろう。多くの情報システム部門の職員は、行政職として数年を待たずに、他の職場に異動するのが実態である。これでは、情報システムの調達・運用に関する専門知識を蓄積することは不可能であり、システムベンダーの提供する様々なシステムの調達・運用に関する情報の適否を的確に判断することは叶わない。
ITコーディネーターをはじめとする外部コンサルタントを上手に活用する、あるいは一般企業のように情報システム専門職として職員を雇用する方策でこれらは解決できる。
まだまだ外部コンサルタントを活用している自治体は少なく、その理由は、それらの業務に精通しているコンサルタントは少ないことと、コンサルタント紹介のシステムもないのが実情である。IT企業を退職された人を活用する方法もありうるのであろう。
情報システムの専門家を雇用している自治体はあるにはあるが、まだ少数派である。今後は、これらの自治体が多数派になることを期待する。

2.国の度重なる制度変更

後期高齢者医療制度の廃止もしくは変更が政治日程に予定されており、子供手当の行方も定まらない。このような国の制度変更の度に、自治体の情報システム変更は行う必要があり、個々の自治体ごとのシステム変更をパッチワーク的に対応しているのが実態である。これらの変更でビジネスチャンスを掴んでいるのが、情報システムベンダーであるが、国全体としての非効率は顕著である。
国の制度変更は大義名分があるのは当然であり、これを悪と捉えるのは間違いであるのは言うまでもない。しかしながら、多額の税金がこれらのシステム変更に費やされる実態を捉え、国の制度変更に対応したシステム変更の方法を、少なくとも標準化することが出来ないであろうか。私自身はまだ解決策の萌芽も見出していないが、これらの経験を多くの自治体では公開することで何がしかの解決策を見出したいと考えている。

3.入札システム

入札システムは、自治体等の調達方法として優れた方法である。最低価格を提示した業者に落札されるのであるので、予算に制約がある自治体では当然のシステムとなる。しかしながら、システム性能や将来の対応力などの複雑で、かつ評価が容易でない自治体の情報システムの調達には必ずしも適していない。
総合評価方式で選定する方法も一般に用いられているが、これも万能ではない。すなわち、日進月歩の情報技術を背景にした自治体システム導入を総合評価することは、先に述べた専門家でない自治体職員には可能とも思えない。
では、どのような調達方法があり得るだろうか。一つの試案であるが、総合評価方式を採用し、第三者に評価を任せる方法である。自治体住民に任せるのである。情報に関する専門知識を持った住民である。自分達の税金を使うのであるので、慎重に使途と調達先に慎重になる。もちろん、誰が選定に携わるかは非公開にするのは言うまでもない。

4.セキュリティ・安定性への対応

私は、民間企業に勤務経験がある。その私から見て、自治体のセキュリティ対応と安定性対応は過剰品質であると思える。もちろん、公的サービスを提供する自治体であるので、万が一の事態に備えるのは、もちろんであろう。
しかしながら、過剰と思える対応が存在する。例えば、フリーソフトの利用である。フリーソフトの使用を排除する自治体も存在する。現在のフリーソフトは、品質も安定性も有料ソフトより優れている例も多く見られる。また、他の例はUSBメモリーの使用禁止である。自治体によっては、一般職員によるUSBメモリーの使用を禁じている例がある。USBメモリーの外部持ち出しによる情報漏洩の事例が後を絶たないが、要は使い方の問題である。住民の個人情報に関わるデータについては、持ち出し禁止にすることは頷けるが、一般事務に関わるデータにもこれらの規制を持ち出すのは、明らかに過剰であると認識される。

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