販売促進の基本「1対多と1対1」(1)
「お客様との対応が重要だ!」と言う経営者は多い。最初のうちは誰でもこの言葉を胸に、お客様との対応を心がけているだろう。しかし、その気持ちも何らかの原因で薄れ、時にぞんざいに、時におざなりな対応をしてしまうことがある。ビジネスは「一期一会」だと言われることが多いのにも関わらず、である。
自分は1人、お客様は何人?
例えば、自分が何らかの商品を店頭で販売している販売員だったと
する。ある程度忙しい小売店で、お客様は比較的多く来店する。
お客様は待ってはくれないし、自分のペースに合わせてくれることも
ない。自分は1人しかいないにも関わらず、お客様の数は何人もいる
のだ。どんどんお客様が来るものだから、時におざなりな対応になる
こともある。この場合、販売員から見れば、自分は1で、お客様は
多になる。
一方、高級な宝飾店に勤務する販売員がいたとする。ほとんどお客様はやってこない。1時間に1人も来れば良い方だ。そのため、お客様
との対応は必然的に丁寧になる。お客様は何人もやって来ないのだ。この場合、販売員から見れば、自分は1で、お客様も1になる。
以上2つのケースは、販売する商品も異なれば、利益率も異なる。
お客様が多い小売店が必ずしも儲かるとは限らず、お客様が少ない
宝飾店が必ずしも儲からないとも限らない。扱う商品や価格、需要と
供給など様々な要素によってお客様が来店する数は変動する。
もちろん、曜日や天候などの諸条件によっても左右されるはずである。
しかし、自分とお客様の関係は1対多と1対1で異なることが分かる。
お客様が頻繁に来る小売店では、1対多になるし、お客様の数が
少なければ1対1になる。自分を基点に考えれば、販売員はそう
いった見方をするだろう。
1対1しかない
しかし、「販売員の視点でお客様を見る」ことにほとんど意味はない。
なぜならば、買うのは販売員ではなく、お客様だからである。
先ほどの例をお客様の視点でもう一度考えてみる。頻繁にお客様が
来店する小売店では、販売員の視点では、販売員とお客様は1対多になる。しかし、お客様の視点で見れば、販売員とお客様は1対1である。お客様は、自分一人しかない。そして、販売員もお客様の視野の
中には基本的には1人しかいないのだ。
高級な宝飾店でも、もちろん1対1である。お客様にとって、専門的な
知識を有する販売員は1人しかいない。
つまり、お客様の来店数が多くても少なくても、お客様からすれば販売員は常に1人しかないことになる。であれば、どんな業種であっても、
どんなお店であっても、それが東京だろうが地方だろうが、朝だろうが夜だろうが、販売員とお客様の関係は常に1対1の関係になる。
これは、至極当たり前のことでありつつも、極めて重要な考え方で
ある。
お客様が列をなしていれば、販売員、すなわち売り手からすれば、
お客様たる買い手は複数に見える。しかし、買い手の立場から
すれば、周りに他の買い手がいようがいまいが、常に販売員は
1人なのである。
お客様は常に1人
だとすれば、販売員に求められるのは、「お客様は常に1人である
という考え方」を持つことだ。そう考えれば、自分が何を売っていようが、忙しかろうが、眠たかろうが、お客様に最高の対応をしようと
考えるはずである。
ビジネスが一期一会であるとすれば、余計にそのことを意識しなければならない。お客様からすれば販売員は1人しかいないのだから、販売員が忙しいなどどんな状況下にあっても、自分のことを例え短時間で
あっても真剣に考えてほしいと思っている。
それは、例えば「レジ打ち」などの業務でも同じだ。レジ打ちを行って
いる店員は、お客様との関係が一期一会で、そして、お客様は常に
1人という意識は持っていないだろう。だから、最初は別としてもいずれはその業務に慣れ、そしておざなりな対応になってくる。しかし、レジ
対応が悪ければ、お客様は二度と来ない可能性も高い訳で、それを
続けていればお客様はいずれ誰も来なくなる。
常に、お客様は1人で、自分も1人と言う関係を意識する必要がある
だろう。
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