被災地企業の支援
あの大震災の被害を受けた企業への支援活動が終了した。その企業は東北地方の菓子製造小売業者なのだが、5年前の津波によってスタッフの一人が亡くなり、店舗と自宅が全て流出し、事業を継続することが不可能になった。その後、国による復興支援策を得て昨年に新店舗を開設した。経営の目途がついた後に、さらにそれを確固たるものにするための復興庁のプログラムの一環として、僕も支援することになった。
その半年後にようやく支援を終えたのだった。
被災した経営者の心痛と苦労と計り知れないものだったろう。この企業のように再興できた企業の一方で、再興をあきらめた企業も多いと聞いている。
地元の顧客がいなくなれば、経営が成り立たないのは当然なのだから。支援先の企業の店舗があっただろう地区は、まったくの更地となり、現在は何も存在しない盛り土だけの土地だけが残っている。
このような企業への支援の第一歩として、まず現状の問題点を整理することから始めた。幸いなことに、その企業が最近商品化した菓子がヒット商品に育ち、売上が伸びている。
そんな経営者が考える第一の問題点は、ヒット商品の菓子の生産上の問題点だった。売上の半分以上を占めるヒット商品の生産が注文数の変動に対応できなくなることがあり、注文を断ることもあるということだった。被災地の菓子店が作るヒット商品ということで、全国からの引き合いが急増することがあるということだが、生産が追い付かないことが度々発生するという事態だった。受注生産でなく、ある程度の在庫が可能な商品であるが、それも限度があり臨機応変に生産調整する必要がある。にもかかわらず、その商品を作ることができる職人は限られていた。
この事態に対応するための手段として、まずその商品の生産マニュアルを作成し、職人の数を確保することと、次いで生産シフト体制を整備することを提案した。
すなわち、生産能力の増大と計画生産の導入である。今から考えると、至極当然の対応策であるが、これらが本当に役立つかどうかは、正直なところ、当初は僕自身も確信が持てていなかった。
他に考えられる対応策としては、在庫量を増やす、受注を平準化するように発注先に依頼する、他に生産協力先を確保しておくなどもあるが、僕はこの提案した対応策しかないと判断し、それを推し進めた。その結果は、経営者にも納得していただき、4月に新規雇用する新人に生産マニュアルを使って生産教育を行い、今まで仕組みがなかった生産シフト表を元にした生産体制を敷いて、一定の成果が出そうな状況にある。
その他の支援策は、チラシ等の販促物を制作すること、新店舗計画を作成すること、長期の経営計画を策定することなどであった。
特に販促物は、今までほとんどない状況だったので、どうしても必要と考えた。
このように多くの支援策を講じたが、何といっても最大の支援の効果は、経営者に寄り添った相談相手になれたことだと思う。訪問するたびに数時間かけてじっくりと経営者の話を聞いて、何を望んでいるのか、何が悩みなのか聞いてみた。全てを失い事業を中断せざるを得ない状況に追い込まれた経営者は、何をどのように立て直したら良いのか相談相手もいない状況にあったと思う。そのような中で、状況を整理し、事業をどのように進めれば良いのか冷静に考えられる機会を提供することだった。
支援の結果が出るのは、これからのことだろうが、このような機会に出会えたのは僕自身にとってもかけがえのないことだった。
中小企業庁が推し進める経営発達支援計画、この計画を現在策定されている商工会議所・商工会が多いと思う。
「経営者に寄り添った支援」という基本理念が打ち出されているが、どのような支援が「経営者に寄り添った支援」に相当するかは明確ではない。経営指導員やコンサルタントが押し付けるのではなく、経営者が望むことを面倒がらずに、まず聴いてみることからはじめ、多面的な視点を示唆することが、「経営者に寄り添った支援」に結びつくのだと思う。
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