総意は必ずしも真意にあらず

イギリスのEU離脱はイギリス国民の総意とされています。離脱することが本当にイギリス国民のためになるのでしょうか?弊社の大木顧問にインタビューを行いました。

大木 ヒロシ(おおき ひろし)顧問

 

イギリスのEU離脱

イギリスのブレグジットに関わる国民投票の結果、過半数がEU離脱に賛成しました。冷静に考えると、EU離脱することでイギリスに経済的に見ると得はありません。EU離脱によりイギリスに進出している日本の工場は撤退することになります。日産も撤退を予定しています。工場がイギリスから撤退することになると、イギリス向けに製造している商品には関税がかかるようになります。イギリスに進出している日本の企業は1,000社ほどあります。その中のかなり多くの企業がイギリスから撤退する可能性が出てきます。その結果イギリスは経済的にひどく落ち込む可能性が高くあります。やはり、イギリスのEU離脱は、いろんな意味でのデメリットの方が大きいと考えられます。

イギリスに於いてはEU離脱に国民の多くは賛意を示していますが、アイルランドとの関係性も含めて考えると、客観的に見て良い事がありません。国民の総意は離脱を求めていますが、冷静に考えると国民の為にはならないのではないでしょうか? 総意は必ずしも真意たり得ないということです。

 

辺野古への基地移設反対運動

日本では沖縄の辺野古への基地移設反対運動が県民の総意ということになっています(実際は投票率からみれば総意とは程遠くあります)。基地移設に反対することで、現実的には結果普天間の基地が残ってしまう状況です。

普天間の基地には私自身何回か見に行ったことがあります。すぐ傍に幼稚園や小学校などの学校があります。海兵隊が中心で緊急時に対応する為の訓練ですので、離着陸に非常に無理があります。普天間の基地は「今そこにある危険」です。

基地を移設しないと、このままではずるずると普天間の基地がそのまま残ることになってしまい、今のままで万一緊急事態が発生したなら、とんでもない被害が出る可能性が危惧されます。普天間の基地周辺はとても危険な状態にあるのが現実です。

辺野古への基地の移設に反対したい気持ちはよくわかります。しかし物事には流れがあります。流れを変えていくにはまず辺野古へ基地を移設して、それから時間をかけて辺野古を撤退してもらうことです。基地の除去、つまり米軍に撤退してもらうには時間をかけて考えるのが客観的ではないでしょうか。やはり、総意は必ずしも真意では無いという事です。

 

総意が真意ではない例え

集合の誤謬という言葉があります。例えば今の日本では、消費の2割程度、15%から2割くらいまでは生活の質を変えずに消費を減らすことができます。服の買い替えを止めて同じものを着る、美容室へ行くのを止める、レストラン等の利用を減らす、高級食材は控える、などの方法です。それでも栄養失調になったり、みすぼらしくなるようなことはありません。しかし、もし国民全員が皆でそれだけの消費を減らしたなら、国民総生産の10%近くが減ることになり、国の財政は危機的な状況に追い込まれてしまう可能性があり得ます。一人ひとりは正しいと思ってやったことであったとしても、全員がやってしまったとすれば、経済が成り立たなくなってしまいます。つまりは総意は真意ではないということに繋がります。

 

社長の仕事は改革すること

会社という組織に於いても同じことが言えます。社員の皆がやりやすい方法で円滑な業務運営を目指すだけでは、売り上げが増えません。社長の仕事は会社の業績を向上させるために改革を成し遂げることです。

世の中の変化に対応できることが、売り上げを伸ばすことに繋がります。変化に対応する為には、常に変化していくことです。変化するには時に苦しい思いをしたり、辛いことを受け入れたりすることもあります。皆の意見でやりやすい方法があったとしても、その方法で業績が伸びない場合は社長の権限で止めさせなければなりません。社長が追い求めるべきはやりやすさではありません。改革です。社員の総意とは別の視点で客観的に見て、正しい方向へと改革を促すことが大切です。時としては株主からそこまでの権限はないと言われようとも、それを越えてでも改革して業績を上げることが社長の役割です。

 

結果が出ることが人々の真の望み

社会の中でそうであるように、会社に於いてもリーダーは今を見据え次の時代へ向けた改革をしていくことが大事です。働きやすいのは一見良いことのように見えますが、業績が下がり、給料が下がり、ボーナスがでない、という結果になったなら社員達は納得しないでしょう。多少の厳しい思いをしたとしても、業績が上がり、給料が増えた方が良いはずです。

アップル創業者の一人であるスティーブ・ジョブズは厳しいリーダーシップを発揮した人です。彼の死後にアップルの超一流技術者達が言葉にしたのは「ジョブズに言われたから自分の力を120%出せた、入ってくるお金もそれ以上だった。彼のお陰で伸びられた」

これからの社長にはジョブズのような、厳しさが必要なのではないかと私は思います。業績を上げるための改革を行い、社員の皆を引っ張っていく。少々辛いことがあったとしても、結果的に実入りが増えることが、皆のためになります。

必ずしも社員の総意が真意ではないことを、社長は忘れてはいけません。

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