蕨商工会議所の新たな取り組み【地域の中小企業診断士連携セミナー】見えた!~地域の可能性を拓く次世代型セミナー~

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はじめに

「売れなくなった、伸びなくなった。まるで儲からん」なぜ?

残念なことに、ここ一〇年、ローカルでの講演会等の終わりに必ず聞く言葉になってしまった。
原因は分かり切っている。地域内の少子高齢化と都市部への人口流出で消費人口が急激に減ってしまったからだ。減少する一方の域内需要のみでは立ち行かない。オーディエンス(聴衆→顧客)のいない中ではどんなに上手な笛も太鼓も価値はない。

では、どうすれば良いのか。

ローカル・中小企業の業績不振を後目に、ネット通販市場での物販系は2019年の10兆515億円から2020年度は12兆2,333億円と2割以上も伸びている。
こうしてみると、縮小する域内販売の落ち込み分は新たなネットDX対応で回復を図るしかないのでは無いか。

ローカル・中小企業にチャンスが見え始めた。

地域(ローカル)にとっては当たりまえで珍しくもないモノが、それを知らない人にとってはとても珍しく、興味深いモノにうつる。そして、珍しいは経済心理学でいう「スナッブ効果」を生み、商品・製品の高い付加価値となる。

大木ヒロシ『1/10,000マーケティング』

上記の文章が、昨年末に上梓した「著書1/10,000マーケティング」の冒頭の文である。

コロナ禍を経て地域の中小企業の経営悪化が進み、廃業・倒産が増加傾向にある。このまま進行すれば、地域経済そのものが行き詰ってしまう可能性が指摘されている。

そうした中で各地域の商工会議所ではセミナー・研修等を通じた地域経済活性化に取り組んではいるものの、その実効は上がっていないというのが現実で、受講者募集にも大変な苦労を強いられている。

セミナー・研修を「情報学」的に整理して見ると

 情報(セミナー)とは

  1. 情報とは、情報が無いと、それは「無いのと同じ状態」にある。知らなければ、それは無いのと同じだ。だから、新たな経営手法等をセミナー・研修を通じて知る事は経営者にとってとても重要である。
  2. 情報は、「情報量の多寡で選択される」。巷に溢れている情報、すなわち誰でも知っている情報には価値は無い。これはセミナー等で考えると、誰でも知っているような「セミナー・研修」を今さら聞く意味は無く、興味を示す人は少ないということになる。「うちの会員の殆どは60代以上だからDXなんて新しい情報には馴染めない」と言うのでは未来はない。「高齢経営者を援ける『使えるDX』」や「60歳から手習い塾」第1回AI(Canva)活用の超低コスト販売促進、等のシリーズ化の工夫で、受講者数を安定させる工夫もある。
  3. 情報は情報自体に価値は無い。要するに、得たその情報が使えなければ価値は生まれないというのが道理だ。

最も重要なのは三番目の「情報の価値化」である。その情報を得るだけでは意味はなく、「どうしたらその情報を自らの店・会社の経営改善・収益改善、そして売上拡大に使えるか!」ということがポイントになる。しかし、多くのセミナー・研修が情報の価値化にまで至らず、都度の受講者満足を得られていない。その結果として受講者数を上げられないでいる。

「情報の価値化」を意図した蕨商工会議所のシン・セミナー「小さなお店のためのマーケティングセミナー」への取り組み

蕨商工会議所のセミナー担当沼口氏は、今回のセミナーの理論構成の主体を成す「1/10,000マーケティング」を読み込んでいくうちに、従来の大手企業向けの「差別化理論」と全く違う、ローカル中小というまさに会員の過半を占める中小企業、なかんずく小規模事業者にとって唯一可能な「差別化戦略」と見た。

しかし、情報量的に考えると実効価値は高いものの、同書は全く新しい理論構成であまりに馴染みが薄い。筆者を講師に迎えても受講者層は経営知識レベルの高い層のみに限られる可能性は高く、受講者募集が危ぶまれる。

そこで、地元の実務型コンサルタントである「中小企業診断士」の先生方と全国的な視点と取材力と大手中小の何れにも経営指導実績の高い「同書の筆者」を組み合わせるのが良いのではないかと考えた、と言う。

セミナー構成の概略

第1講座は「小さなお店のためのマーケティング」セミナーとして、1/10,000マーケティング理論に基づいた中小企業の新たな時代(DX時代)に向けた理論と実務ポイントの解説を行った。

その後、第2講座としてグループワークを行い、域内の中小企業診断士がそれぞれのグループのファシリティターとして参加した。

グループワークで所定のワークシートに書き込み、グループ内での意見交換を行い、グループワークの終了後にファシリティター(中小企業診断士)がグループ内意見を要約して全体に発表。その発表に対して第1講座担当の講師とアドミ・ファシリティター(中小企業診断士のリーダー)が講評を行った。

セミナー実施に向けた取り組み概要

  • 事前の1/10,000マーケティング戦略の著者と地域内中小企業診断士との事前講義と打合せの実施。

※Zoomでのオンライン講義でありながら、意見交換も活発に行われ1/10,000マーケティングについての具体的理解が得られたとの意見があった。

  • 講義直前(30分前)に全員で最終調整を行った。

さいごに

開催当日6月18日は全国的に大雨被害が予報され、新幹線等で一部運休も伝えられた。参加者数の大幅減少の恐れがあったにもかかわらず、半数以上が参加してくれた。

基本的には域内の商工事業者の方々の前向きな意欲に合わせ、本講座のテーマ設定と講義形態に興味を感じたという人が多く見受けられた。

グループワークにおける意見交換は活発でファシリティター担当の中小企業診断士の方のまとめ方も分かり易く明快であり、グループ内での共有化は経営アイデアに向けて具体的に落とし込まれる形となった。

以下、私感として。

今回のセミナー方式を通じて「1/10,000マーケティング」というローカル・中小企業に特化した全く新しい差別化戦略論の実効性が確認できましたことは望外の喜びであり、商工会議所のご担当者様、関係者の皆様、受講者の方々、そして何より経験と知見の高い中小企業診断士の先生方のご協力に感謝申し上げます。

尚、研修後の受講者アンケートでは非常に高い評価を頂けたことを付記させていただきます。

セミナーレポート

セミナーの様子や感想などは、以下のリンクよりご覧いただけます!

担当講師

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