iPadが常識を変える (渋谷雄大)
先日アメリカで先行発売されたiPad(アイパッド)が大きな話題となっています。発売1週間で50万台超を出荷し需要に対する供給が追いつかないという理由で、日本での発売が1ヶ月延期となるなど、高い注目を浴びています。
ちなみにiPadとは一言でいうと画面の大きなiPhone(アイフォーン)と言えます。iPhoneのアプリケーションはiPadでも共通で利用できますし、見た目や機能面は、ほぼiPhoneだと考えて頂いて構いません。
私はこのiPadなるものには、ビジネスの根本を覆すほどのパワーが秘められていると考えています。そして、このパワーはGoogleがネット業界で急激に成長し、我々の生活を大きく変えたように、急速にそして確実に今のビジネスのあり方や、商売のあり方を変えるきっかけになるのだと思います。
そんな事はないと考えている方は良く考えてみて欲しい。ネット通販の重要性が15年前にはイメージできたでしょうか。商品に触れないで購入するインターネット通販が成功するなど誰も考えなかったはずです。もっと直近で考えれば、電気自動車が自動車メーカーにとってここまで重要な位置を占めるとは考えられなかったし、理解できない事だった。ネット通販、電気自動車、常識ではスタンダードになるはずがないと考えられていた事が今の常識になっています。常識を疑えるかどうかがビジネスの変化を読むということだと思います。iPadがどのような結果になるかは誰にも分かりませんが、少なくとも既存にあるネットブックやノートPC、iPhoneとも違うであろう新しいデバイスだからこそ、これをきっかけにして何か大きな変化が起こると見ているのです。
ではどのような変化が訪れるのかを考えてみたいと思います。
例えば、ホームページについて、これまで以上にホームページの重要性が高まります。例えば、新規取引先への営業時には商談中にホームページをチェックされる可能性が高まるでしょう。iPadで私がとても重要だと考える特徴のひとつは、取引先のホームページを見るために「わざわざ電源を入れて、OSを立ち上げて、ブラウザを開いて…」という動作の必要性がなく、ぱっとネットにつなげられることにあります。このため今までは、商談中にPCを開いて相手先のホームページを見ることは少なく、場合によっては商談後に相手のホームページを開いていましたが、これからはiPadを商談中に開き商談中に相手先のホームページを検索したり、相手の企業の評判を検索したりと、商談の中にインターネットが入り込んでくると考えられます。さらに発展すれば、営業で使う商品パンフレットというものの概念も変化し、ホームページが商品カタログと成可能性が高まります。ということは、これまで以上にインターネット対策が商談の成否に関わってきます。
ちなみに現在の企業ホームページの多くは文字と写真中心です。申し訳程度に動画を取り入れたホームページはあったとしても、本格的な動画中心のサイトはなかなか普及してこなかったのが現実です。
しかし、これもiPadの普及で大きな変革が訪れる可能性があります。iPadは動画再生においても大変優れており、動画再生もスムーズにかつ綺麗に表示されます。ということを考えると、今後はいよいよ動画中心のホームページが威力を発揮するようになります。現状でもUstreamやYoutube、ニコニコ動画など数多くの動画配信サービスが登場しており、簡単に動画配信が始められるようになってきました。
ちなみに当社でもテストケースとして動画配信のテスト配信を行っておりますが、動画という表現方法はホームページ閲覧者へ伝わる情報量が圧倒的に大きく、商談の説得性や訪問者へのPR素材として普及すると考えられます。
そして最大の変革の可能性は、ペーパーレスが実現するのではないかということです。これまで数十年にわたりペーパーレスが言われて久しいですが、今回はペーパーレスが本格的に進展すると考えられます。例えば、iPhoneのアプリケーションには手書きアプリがたくさんあります。しかし、如何せん画面が小さく、どうしても紙と同じような快適性は実現出来ませんでした。
それがiPadという画面の大きさが実現されたことで、紙の良さである、思いついたときにぱっと開けて、ぱっと書ける、全体を眺めたりページをめくったりしながら思考を巡らせられる。事がすべてまかなえるようになり、さらには、みずから筆を動かすことで脳を刺激し、新しいアイデア発想の源泉ともなります。
iPadは画面が大きく、思いついたときにぱっと始めて、文字が書ける、手描きによる文章作成も容易です。ノートブックやノートPCでも確かに持ち歩きはできますが、それでも移動中にメモしたいときには、PCを立ち上げて、書き始めるまでに3~4分は掛かってしまい紙には勝てませんでした。しかし、iPadはこの3~4分を10秒以内に抑えることが可能ですから、紙の代替になる可能性が飛躍的に高まったと言えそうです。
そして、iPadは紙媒体の良さに加えてデジタルのメリットも受けられます。
これまでは会議で誰かが書記となり議事録をわざわざ作成していたものが、今度はiPadの画面に全員が同じ議題を表示させ、会議参加者全員で手描きメモを共有し、議事録を完成させていく。そしてそのメモを全員が保存することができる。保存したメモは、一瞬でメールやクラウドなどを使い、全員に共有されるようになります。しかもiPadならば出先でも参照することが可能ですから、移動先でその議事録を見ることができます。
さらには、PCが苦手はベテラン営業マンに持たせれば(我が家の息子は4歳にしてiPhoneを完全に使いこなします)今まで通り手描きで報告書を書いて保存するだけで、全員にデジタルデータとして共有されます。無理やりキーボード操作を勉強する必要は無くなるわけです。
今現状でこのようなデバイスに注目し、自社の生産性向上や効率化ツールとして取り組もうとしている企業の多くは、IT企業や一部のベンチャー企業ではないでしょうか。
しかし、本当は中小企業や地域、地域商店街、高齢者の皆様などがこのようなツールに注目し、導入していただくことが必要なのだと考えます。中小企業が使いこなすことにより、小回りや柔軟性を最大限活かしながら生産性向上を実現できるはずですし、地域経済にとっても情報発信ツールとして有効です。商店街に関してもPC音痴の八百屋の親父や豆腐屋の女将さんでもiPadは使いこなせるツールですから、商店街の情報発信や地域住民とのコミュニケーションツールとして有用です。高齢者にとって、パソコンでメールを打つよりも簡単に楽しく使いこなせますし、地域と高齢者とのコミュニケーションツールとして活用できます。 さらには地域にとっては障害となっていたインターネット環境の未整備・格差についても急激に改善してきていますし、SoftBankも先日電波改善宣言を孫社長が行っていますので期待できるのではないでしょうか。
これからますますインターネットやiPad、iPhoneのようなデジタルツールは発展し企業に浸透し、ビジネスにおいて大きな位置づけになるのではないでしょうか。その波はおそらく変えることはできないでしょう。であれば、企業としてはいかにこれらツールを活用しながら、自社の生産性向上、効率化を図っていって頂きたい。
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