顧客視点の販売能力とは(1)

PAK65_torinosutennai20130825500

最近、小売店を始めとする販売員は顧客視点に立つことが重要だと言われる。もちろん、これは今に始まったことではない。昔から当然のことのように言われている、あるいは言われ続けているもので、販売員が持つべき基本的な考え方でもある。では、なぜこのようなことが改めて叫ばれるようになったのだろうか。

書店に行けば、販売や営業に関する本が棚一面に並べられている。
各地で実施されている販売や営業に関するセミナーには、多くの経営者や販売員が参加し盛況である。これは、昨今の販売に関する能力向上の必要性あるいは重要性を反映したものと考えられる。それほどまでに販売・営業に関する企業の注目度は高まっていると言えよう。

ところで、販売員の販売能力とは何か。ここでは、販売員の販売能力を「顧客視点で捉え、顧客が物を買いやすい情報提供能力あるいは情報媒介能力」と定義する。

本論文は、著者が一消費者(以下、消費者を顧客と表現し同義で扱う)として買物をした事例を基に、今後の販売のあり方を顧客視点から問うものである。

多くの企業が優秀な人材の獲得に躍起になり、そして人材育成や人材教育に力を入れている。だとすれば、それらの成果として販売員の販売能力は向上しているのではないのか。それとも、能力は向上していないのだろうか。それについて、考えてみたい。

販売員の販売能力とIT市場の拡大との関係

確かに、最近の多くの企業は販売員の教育に熱心であり、また、販売員個人の学習意欲も高い。販売や営業に関する書籍の売上が伸びる中、自ら積極的に問題意識を持って販売能力向上に取り組む人は増えている。その意味で、販売員の商品知識は向上し、自信を持って販売活動に取り組む販売員は増加していると言える。

一方で、インターネットは我々の生活には欠かすことが出来ないものとなってきた。インターネットを過去1年間に利用したことのある人は推計で8,811万人となり、人口普及率は69.0%となっている。また、インターネットの個人利用率は74.4%であり、世代別では13歳~40代で9割を超えている。

インターネットの普及に伴い、IT市場も急拡大している。(図表1)

BtoCの市場は拡大の一途を辿り、インターネットで商品・サービスを購入する人は増加している。また、購入する商品やサービスも多様化している。インターネットの性質からすれば、初期の頃では本やチケットなどどこで買っても同じ商品類が購入の中心であった。しかし、最近ではインターネットで売れない商品はない、あるいは、買えない商品はないという状況にまでなった。さらには、小売店などの店頭にわざわざ足を運びながらも、自宅に帰ってインターネットで商品を注文する顧客が増えているという。

図表1

顧客視点(1)図表1

出所:「平成19年度我が国のIT利活用に関する調査研究事業(電子
商取引に関する市場調査)報告書」経済産業省

IT市場の拡大は、顧客の新たな需要を開拓したと受け取ることもできる。利便性が高く、どこでもいつでも購入できるというのは顧客にとって魅力的である。また、ITインフラの整備も進み、業界がインターネットでの買物における信頼性の獲得に力を入れたことも顧客の心を掴んだ要因であろう。

しかし、インターネットで商品を購入する理由(図表2)を見てみると、現在の販売員の販売能力に対する一種の不満も読み取ることができる。だとしたら、IT市場の拡大は、顧客のリアル店舗における販売員に対する不満の表れとも受け取れる。つまり、販売員の販売能力は一見すると向上しているように見えるが、それは顧客の心を掴んでいないのではないか。販売員の商品知識の向上は進んだが、顧客視点に立った販売員の販売能力という意味ではむしろ低下
しているのではないだろうか。

図表2

顧客視点(1)図表2

出所:「平成19年通信利用動向調査報告書」総務省

参考文献

○「販売士検定試験2級ハンドブック」株式会社カリアック発行
○「平成19年通信利用動向調査報告書」総務省
○「平成19年度我が国のIT利活用に関する調査研究事業(電子
商取引に関する市場調査)報告書」経済産業省

SNSでセミナーの様子をチェック

#ジャイロのセミナー