中小企業に戦略は必要か ~顧客の視点から~

3月17日の日経新聞及び日経MJにてJSCI(日本版顧客満足度指数)の調査結果の発表があった。これによると、顧客満足度で高い評価
を得た企業は、第1位が東京ディズニーリゾート、第2位がECカレント(ネット通信販売業)、第3位があきんどスシロー(回転寿司、飲食業)で
あった。それ以降もジャパネットたかた、アマゾン、じゃらん、スーパー
ホテル、サイゼリア、帝国ホテル、餃子の王将などがランキング
されている。

この顧客満足度指数の考え方はブランド戦略の思想も取り入れた
非常に分かりやすい評価方法を取り入れており、顧客満足度を
評価するにあたって下記の6つの視点で捉えている。

(1) 顧客期待・・・利用前の期待・予想
(2) 知覚品質・・・実際にサービスを利用した際の品質評価。単に機能や性能だけではなく、信頼性や雰囲気、デザイン、ストーリー性などの
感覚的な価値も含んだ広い品質
(3) 知覚価値・・・受けたサービスの品質と価格を比較しての納得感や
コストパフォーマンスなど
(4) 顧客満足・・・利用して感じた満足の度合い
(5) クチコミ・・・利用したサービスの内容について、肯定的に人に
伝えるかどうか
(6) ロイヤルティ・・・今後もそのサービスを使い続けたいか、もっと
頻繁に使いたいかどうかなどの利用動向

そして、これらの関係は下記の図のようになるとしている。

中小企業に戦略(宇野) 彩度200%

 

出所:サービス産業生産性協議会「平成21年度JCSI調査結果発表」
プレスリリース

 

つまり、消費者は事前の期待を上回る品質評価をしたならば顧客満足に繋がり、あるいはお得感も高まって顧客満足に繋がる。その結果
クチコミをしたり、何度も利用したりするようになると言うことである。
だからこそ、これらのランキングには非常に納得感がある。

ランキング上位の企業の業績を見ると、この景気悪化局面にあって
好調である企業が多いことが伺える。もちろん調査対象そのものが
大企業であり、大企業の中の話だと言うことで済ませることは出来る。しかし、ランキング上位にある企業の取り組みについては、中小企業
でも参考になるところが多くあり、顧客の視点から企業の取り組みに
ついて考えるには良い材料だと考えられる。

顧客満足だけではダメであるが、それがクチコミになり、何度も利用
するようになるからこそ企業の収益は上がる。そして、そのためには
事前の期待を良い意味で裏切るほどの良い体験が出来たと感じ、
価格的に納得感があることが必要なのである。すなわち、知覚品質と知覚価値を上げることが企業の収益を上げるためには重要である
ことが分かる。逆に知覚品質と知覚価値を上げれば不況に負けない
経営が可能になると言うことである。
(一方、事前の期待を敢えて下げておいて相対的に知覚品質と知覚
価値を上げることも出来るが、これはここでは取り上げない。)

果たして、中小企業にとって知覚品質と知覚価値を上げるために戦略は必要であろうか。

消費者にとって欲しいものやサービスが明確に捉えられているときには、ある意味戦略が無くても売れる場合がある。これは、最寄り品を
考えてみれば分かりやすい。トイレットペーパーやお米などである。
この場合には、機能や性能、対費用効果(機能÷価格)、立地(近い方が良い)がポイントとなる。特に立地がポイントで自宅から近いところに
あれば、そこそこ売れるのである。だから、特に戦略は必要無いかも
しれない。高度成長期に乱立したパパママストアーもこの類である。
一方、消費者にとって欲しいのかどうか自分でも良く分からないものやサービス、あるいは自分がこだわるものやサービス、自分や家族、友達が楽しくなれるものやサービス、生活が面白くなるものやサービスなどについては、このようにはいかない。ただ近いから、そこにものがあるから、今まで通りやっているからでは全く売れないのである。何故なら、このようなものやサービスは知覚品質と知覚価値が高くないと買って
くれないからである。また、消費者の知覚品質と知覚価値の捉え方が複雑に、個別になってきているためである。残念ながら、今の時代
では、ものやサービスをこのように捉える消費者がほとんどであると
言うことである。

これまでのマーケティング戦略では、ものやサービスが売れない時代
なのである。ましてや中小企業は人も金も限られている。それでも
生き残るためには、一点突破しかない。だからこそ、自分の得意な
ところで、ある特定の消費者には受けるものやサービスを提供しな
ければならないのである。そして、これは戦略そのものである。
顧客側の視点から考えると、戦略は必ず必要な時代なのである。

 

 

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