事業承継の危機(2)ここ5年で1万社が消える?

前回のつづき

事業承継問題の本質と対策

ゴーイング・コンサーン(事業の永続)企業の大命題でもある。そしてゴーイング・コンサーンは事業承継を抜いては考えられない。中小企業の経営者の過半を占める団塊世代経営者が、引退年齢を迎えており、事業承継は喫緊の課題となっている。一方で、準備が出来ていないケースが大半というのが実情である。

しかし、多くの場合、後継者と目する者が全くいないということでは無く、現経営者がバトンタッチを考えていない、もしくは考えたくないというケースが少なくないのである。

余命等価年齢から考えれば、自分たちの親世代よりは8才程度は若いと言われる団塊世代にとっては、「まだまだ、遠い事に感じていると考えている」、あるいは「社長交代による発言力の低下を嫌がる」という人もある。「死、老齢化を連想させる」からと言う場合もある。しかし、最も多く聞くのは、「現事業が赤字続きであり、後を継がせても、食える状況にない」からと諦めているケースだ。いわゆる赤字経営下での事業承継問題だ。

赤字の会社の事業承継はあり得ないのだろうか?黒字で儲かっている、なんの心配も無い会社でなければ事業承継は出来ないのか?本当だろうか。

現在の中小企業の多くが高度成長期の中後半で創業している。その、創業時点で最初から黒字続きの順風満帆の経営だったのだろうか、自分の周りにいた中小企業経営者の多くは、創業間もなくで苦しい経営を余儀なくされていた。赤字に苦しみ、金策に走り、何とか経営を維持し、やがて黒字経営に持ち込んだ、しかし、それもつかの間、時代環境に翻弄されるように苦しい経営と赤字に悩み、そして又もそれを乗り越えた。だから今がある。

苦労して、苦労して黒字に持っていきながら、やがて、また、時代環境が大きく変化したことに対応できず、売上低下に見舞われただけのことだろう。

苦労は人をつくる。現社長の誠実で周囲から愛される人柄は苦労の中に培われた。何にもめげないバイタリティーもチャレンジ精神も苦労の末に身に着けた。その得難い風格も苦労風に吹かれ磨かれた。全ての思い出は苦労が喜びに姿を変えたものだと、あなたは気づいている。

それなのに、あなたは、「後継者には苦労させたくない」という。「安楽を貪れば」人は堕落する。あなたは自らの子息・子女を堕落させたいと本当に思っているのか。

赤字継承にも大きな価値があることに気付いていただきたい。

どんな事業も一筋縄で行くことは無い、後継者が赤字を解消できた時には大きな自信となる。どんな大手企業といえども、事業は常に不安定なものだ。大企業のシャープがソニーが赤字に悩むのが何より証拠かも知れない。

その不安定を安定的に舵取りするのが社長の仕事だろう。赤字承継はその舵取りを教え、身に着けさせるまたとないチャンスなのだ。親は子を一人前に育てる責任がある。社長は後継者を一人前の経営者育てる責任というものがあるのだ。

みんな勘違いしている。赤字継承こそが本筋なのに。

赤字継承で大事なことは、後継者と二人三脚で赤字解消に向けて、互いに、知恵を絞り、汗をかくことだ。赤字のままで、経営者としては素人同然の後継者に「投げ渡す」というのであれば、それは無責任の極みという他はない。

事業承継の成功に向けた、最大のポイントは、後継者を育てて、その後に経営をバトンタッチすることである。

そのためには、事業承継には短くて三年、理想的には五年をかけたい。最初に10年間の決算書を基に後継者と二人で会社の状況と今後を徹底的に話しあうべきだ。

決算書から問題個所は見えてくる。しかし、問題を解決すること重要だが、それで成果を生むことはない。この際重要な事は、チャンスを見いだし、チャンスに焦点を当てて考えるようにすることだ。そこに黒字化の可能性を見いだすことだ。

多くの場合、後継者側がチャンスに気付く。それを互いに議論することで、可能性を広げていくことだ。そして、それを計画にしっかりと落とし込み、その上で、経営者見習いの後継者にやらせてみせるのだ。互いに考え、互いの意見を入れ込んだ計画書にそって、やらせてみせることだ。そして、PDCAを回して行くことで実地に経営を教えながら、共に赤字を解消し黒字化を達成する。

共に、黒字化を目指して頑張る事で苦労を切り抜ける能力を養うことが次世代の社長づくり大きなポイントだ。

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