事業承継の危機(1)ここ5年で1万社が消える?

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中小企業にとって円安はマイナス要因だった?!

日銀の量的緩和は、中小企業に「コスト高インフレ」を押しつけた。 22日の株式市場では日経平均株価の終値が2万264円と2000年4月以来、約15年ぶりの高値を付け、時価総額は592兆円に達し過去最高となった。政府・日銀による量的緩和が功を奏した形だ。しかし、金融の量的緩和とGDP、株価、個人消費、民間設備投資との相関係数を見てみると、株価は0.94と量的緩和効果を如実に反映しているもの、GDPは0.22、民間設備投資は0.57、個人消費に至っては0を下回るマイナス0.07となっている。

FRB(米国連邦準備制度理事会)の「非伝統的」金融緩和政策の成功を真似た「異次元」政策は日本的経済環境の中で頓挫する様相を深めつつある。

要するに、日本の個人金融資産に占める現金・預金は54.5%であり、米国の11.4%と比較すると株式に占める経済の比重には大きな違いがある。マスコミの報道とは裏腹に、日本では量的緩和による株価上昇が個人消費には結びついてはいかないのだ。

むしろ量的緩和は極端な円安となり、輸入価格を押し上げている。輸入材料を加工し、国内に向けて販売する中小企業の多くには、原材料高での価格引き下げ、すなわちコストプッシュインフレとなり強く経営を圧迫している。そこに持って来ての消費税増税は地方と中小企業に致命的なダメージとなりつつあるのだ。してみると、円安と消費増税に苦しむ中小企業に勤める人の所得が増える事は期待し難い。雇用の70%以上が中小企業による現状を考えれば、殆どの家計は厳しいということになる、だから個人消費は伸び悩む。ゆえに中小企業は原価が上がっても価格を上げる事は難しく収益性は著しく損なわれる。ゆえに従業員の給与は上げられない、ゆえに、ゆえに、といった格好が延々と続く。まさに負のスパイラルで、中小企業の将来が見え難くなっているのだ。

事業承継に問題を抱える企業は全体の6割に達している

中小企業の経営者の平均年齢は60.6才に達し、今や5人に1人は70才以上という状況だ。民間調査会社の調査によれば、法人企業代表者が引退したいとする年齢は64.5才とされており、平均年齢と引退希望年齢の差は極端に縮まっている。

こうした状況にも関わらず、30%の中小企業が「事業承継の計画は無い」としており、「計画はあるがまだ進めていない」という回答を含めると60%以上の中小企業がまったく準備をしていない状態だ。(※帝国データーバンクより)

円安によるコスト高インフレの逆風、企業経営者の高齢化、そして後継者問題の3つの要素が絡まりつつ、経営環境の厳しさが増すにつれ廃業も目立ち始めている。このまま放置すれば、5年で100万社以上の中小企業が後継者問題を原因にして潰えるというショッキングな説まで飛び出している。

日本の全企業数421万。その内中小企業が419万8千社であり、25%近くの企業が無くなったら地域は機能しなくなってしまう。自治体消滅の前に、地域企業消滅の可能性が高まっているのだ。解決策は事業承継を勧めることと新規創業の増加以外にはない。地域の商工会議所、商工会としても、地域経済活性化の重点項目として積極的に対応していく必要があるのではなかろうか。

事業承継はイノベーション(進化への適応)を伴う

空白の20年と言われた時期は「過渡期」であった。要するに、旺盛な内需拡大を背景にした戦後の高度成長が終わりを告げ、新たな経営環境が現出したと見る他は無い。高度成長の主因の一つは戦後のベビーブーマーによる人口爆発、すなわち、人口ボーナス現象である。発展途上に一度限り起きる現象であり、2度は期待できないというのが人口統計学上の見地である。

日本の人口は2004年にピークアウトに入り、一貫して減り続けている。国内経済を支える内需環境は、消費者が増える時代から減る時代へと180度転換してしまったのだ。

ここで、事業承継の目的とは何か考えて見る。事業承継は後を継ぐこと、継がせることだが、それは事業の維持に止まるのではなく「進化と成長を目的」としていると考えるべきだ。一本調子で経済が伸びた高度成長期ならいざ知らず、大きな変化を予感させる今後は進化・成長なくして事業の継続は考え難いからである。要するに、事業承継は「イノベーションという変化への適応」を伴う事がなければ、継いだ者、継がせた者にも意味は無くなってしまうということだ。

経営者の平均年齢は年毎に上がっている。一般的には高齢化すればするほど、思考の柔軟性は失われ、思考は守旧に偏り、時代の変化への適応は難しく、やがては経営を維持する事すら難しくなる。実際に世代交代において承継時の後継者の年齢が40才未満の場合、6割近くが継承後の業績が「良くなった」としている。(※中小企業白書2013年)これに対して、60才以上で承継した場合は「良くなった」は4割を切るまでに落ち込んでいる事も証左であろう。

事業承継にあたって、最も肝心な事は世代交代に向けた「新たなビジネスモデル」を描き出す事である。そうして描き出したビジネスモデル(仮説)に向けて、継ぐ者と継がせる者の双方が徹底的に議論・検証することが出来れば、その会社の未来は100年以上の可能性を持てるかも知れない。

 

老舗は、変わらなかったから老舗で有り得たのではない。

時代に沿って絶えざるイノベーションを繰り返したからこそ、老舗として生き残っているのである。

(2回目に続きます)

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